『RAY』に関しても『FLAME BAIN』や『THE LIVING DEAD』のころを知っている人からすれば、いわゆるギター・ロック・バンドらしかぬシンセや同期を盛り込んだサウンドに「変わったなバンプ」と思うかもしれない。けれど年齢を重ね円熟味を増した4人の思いは音楽があるべき形で響くためにもはや手段を選ばなくなってる。その結果、光量の多い眩しいアルバムが届けられた。プログラミング音と共に優しいアコギが僕らを温かく包容し、祝祭感が空まで高らかに鳴り響く「虹を待つ人」。色彩豊かな光が周囲を駆け廻り〈生きるのは最高だ〉と藤くんに言わしめたタイトル曲の「ray」を始めとしたエネルギーと多幸感に満ちた楽曲は僕達の日々を明るく照らし出してくれる。一方で震災を契機に作られた「smile」は静謐な歌い出しから生命力溢れるプログレッシヴ・サウンドが一気に展開し、力強い光で僕らを呑み込む。「(please)forgive」が放つのは切なく淡い光だ。起伏の穏やかなこの歌は安寧とした日常の不自由さ、しかしそれすらも自らが自由に選んだものだ、ということを粛々と紡ぎだしている。
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本原稿は今年1月にBCCKSにてリリースしました『YEAR IN MUSIC 2014』( http://bccks.jp/bcck/130107/info )に掲載した年間ベスト・ディスク・レヴューです。『YEAR IN MUSIC 2014』では、このディスク・レヴューの他にも50本以上に及ぶディスク・レヴューの他、シャムキャッツへのインタビューや書評、再発盤レヴューも掲載されております。PCまたはスマートフォンにて閲覧可能ですのでぜひご覧ください。
音しかなくてもメンバーたちが楽しく演奏する姿が目に浮かぶ今作。J・ガイルズ・バンドの演奏が気付いたらハードコア・パンクになっていて、ハイ・スピードなソウル・レビューになってしまっていたみたいな構成である。スガナミ、きむらかずみ(Ba)、しいねはるか(Key)が創った楽曲はインストゥルメンタル6曲と歌が4曲。速くタイトでスウィング&ロールしまくるリズムに、暖かくテクニカルなキーボードとギターは様々なジャンルを呑み込む。「More Japanisch」ではオリエンタル。「theme#4」では民謡からのヒゲダンスといった具合だ。しかし「MONKEY SHOW」では黄色人種・日本人として踊る意志、「GOD SAVE THE DANCING QUEEN」では風営法とシリアスなテーマな歌詞の曲も。それすらも高速で明るく洗練された形で見せてしまうのが凄い。それは洋楽に近づくのではなく、日本人としてのアイデンティティを持ったうえでのミクスチャー感覚の音楽とパーティーを敷居低く伝えたいからといえる。
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本原稿は今年1月にBCCKSにてリリースしました『YEAR IN MUSIC 2014』( http://bccks.jp/bcck/130107/info )に掲載した年間ベスト・ディスク・レヴューです。『YEAR IN MUSIC 2014』では、このディスク・レヴューの他にも50本以上に及ぶディスク・レヴューの他、シャムキャッツへのインタビューや書評、再発盤レヴューも掲載されております。PCまたはスマートフォンにて閲覧可能ですのでぜひご覧ください。
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本原稿は今年1月にBCCKSにてリリースしました『YEAR IN MUSIC 2014』( http://bccks.jp/bcck/130107/info )に掲載した年間ベスト・ディスク・レヴューです。『YEAR IN MUSIC 2014』では、このディスク・レヴューの他にも50本以上に及ぶディスク・レヴューの他、シャムキャッツへのインタビューや書評、再発盤レヴューも掲載されております。PCまたはスマートフォンにて閲覧可能ですのでぜひご覧ください。
2014年に1stアルバムが発表されたBABYMETALは世界的な人気を獲得するに至り、昨年に引き続き今年もワールドツアーの開催も決定しているなど、日本国内のマスメディアにおいても「メタル」の言葉が登場するようになりました。
そうした一方で、メタルというジャンルには依然、独特かつ敷居が高そうで、なかなか手が出せないイメージもあるように思います。
そこで、今年1月に発刊された『YEAR IN MUSIC 2014』の執筆陣で常日頃メタルを聞いている3名のライター陣、堀中さん、板垣さん、佐久間さん、に、メタル素人の小林が進行役となり話を伺いました。メタルが持つ様々な要素を解きほぐしていくと、そこに雑多で多くのジャンルと隣接する姿が見えてきました。新たな観点が加わり、立体的にメタルを聴くきっかけになることができれば非常にうれしく思います。
堀中:「メタル」や「ヘヴィメタル」という言葉の語源については諸説あるんですけど、よく言われているのが、70年代の中盤くらいにアメリカのブルー・オイスター・カルト(Blue Öyster Cult)の音楽を表現するのに”heavy metal”という言葉が使われたのが最初という説ですね。あと、”heavy metal”という言葉自体が最初に登場したのは、ステッペンウルフ(Steppenwolf)の有名な「ボーン・トゥ・ビー・ワイルド(Born To Be Wild)」の歌詞のようですけど、これはメタルの音楽性を表現したものではないですね。UKの雑誌(Sounds誌)の記者によって、アイアン・メイデン(Iron Maiden)やサクソン(Saxon)といったバンドが70年代後半に出てきたムーヴメントをNWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリテッシュ・ヘヴィ・メタル)と名付けたことが直接的なルーツですね。
<Rolling Stone 20 Best Metal Album of 2014>
1. Yob『Clearing the Path to Ascend』
2. Triptykon 『Melana Chasmata』
3. At the Gates 『At War with Reality』
4. Old Man Gloom 『The Ape of God』
5. Scott Walker + SunnO))) 『Soused』
(以下はリンクを参照ください)
佐久間:オルタナ色が強いし、かなりリベラルなセレクトですよね。
堀中:実はこのランキングの中で、日本のヘヴィメタル専門雑誌であるBURRN!などで取り上げられているのはアット・ザ・ゲイツ(At The Gates)、とか20枚のうち5枚くらいで。日本国内よりも海外の方がメタルというジャンルについては圧倒的に範囲が広くて雑多なんです。日本ではメタルとはあんまり言われてないけど、海外だとメタルチャートにはこういうものも入ってるよ、という。
堀中:このマストドン(Mastodon)の『ワンス・モア・ラウンド・ザ・サン(Once More 'Round The Sun)』というアルバムは、悪い意味ではなく歌もので、アメリカでもチャート・アクションが良くて普通にラジオとかでも掛かっていました。一方で、ギターとかベースの重さだったり、リフの感じにはメタルらしいものがあって、今のシーンで見た時には最もメタルらしいバンドかなと思っています。
——このバンドは2000年アメリカのアトランタ結成ですね。
佐久間:ギターのビル・ケリハーとドラムのブラン・デイラーがトゥデイ・イズ・ザ・デイ(Today is the Day)というヘヴィロック・バンドの出身なんです。残りのメンバーもノイズとか地下音楽系のことをやっていたりして。
今年1月にBCCKSよりリリースされた『YEAR IN MUSIC 2014』についてはBCCKS人気ランキング1位を達成するなど、多くの方にご覧いただき本当にありがとうございます。
この『YIM2014』に連動したブログ企画として、各著者による年間ベストディスクのショートレビューをお送りします。ぜひそれぞれの著者にも注目し、引き続き『YIM2014』楽しんで頂ければと思います。