今年1月にBCCKSよりリリースされた『YEAR IN MUSIC 2014』についてはBCCKS人気ランキング1位を達成するなど、多くの方にご覧いただき本当にありがとうございます。
この『YIM2014』に連動したブログ企画として、各著者による年間ベストディスクのショートレビューをお送りします。ぜひそれぞれの著者にも注目し、引き続き『YIM2014』楽しんで頂ければと思います。
*****この『YIM2014』に連動したブログ企画として、各著者による年間ベストディスクのショートレビューをお送りします。ぜひそれぞれの著者にも注目し、引き続き『YIM2014』楽しんで頂ければと思います。
著者:佐久間 義貴
掲載原稿
Year in Music 2014
- BORIS『Noise』
- Swans『To be kind』
- 佐々木敦『Ex-music
』
- Icuts『Discography』
年間ベストディスク2014
ハチスノイト『Universal Quiet』
夢中夢のハチスノイトによるソロ・デビューアルバム。本作は声のみで構築された崇高な世界観のヴォイス・シンフォニーである。天啓から大地に降り注ぐようなサウンドには思わず眩暈を覚える。その世界観はビョークというより、声のみで構築されたアルヴォ・ペルトというのが、最も近いのではないか。また本作はそのような陶酔するとところに留まらず、声の編集によるミニマルなアプローチもユニークである。
古川麦『Far / Close』
至高のシンガーソングライターによる至高のアルバム。エレガントなアレンジが楽曲の素晴らしさを最大限に引き上げている。極めて豊饒なエモーションに彩られたこの音楽詩集は、初のソロアルバムにも関わらず、既に老成されている。本作で古川麦という天賦の才能は日本の音楽史にその名を刻印した。そして今後も常に古川麦は音楽史のオルタナティヴな存在であり続けるだろう。私は本作を聴いてそれを確信している。
Scott walker & Sunn O)))『Soused』
スコット・ウォーカーとサン O)))の邂逅に偶発性は全くないと言っていい。何故ならばこの両者は出逢うべくして出会った――輪廻の中に互いに矛盾することなく存在していたからだ。それは言い変えるならば、アヴァンギャルド音楽史の中でと言ったところだろうか。それを象徴するように本作は正に正統派アヴァンギャルド・ロックが全編に亘り展開されているのである。しかし、この正統派のアヴァンギャルドはときたら、何たる凄絶か!
Mamiffer『Statu Nascendi』
先日来日公演を行った、フェイス・コロッチャと夫である元アイシスのアーロン・ターナーによる音響ユニットの3rdアルバム。この二人の関係性はどこかアンヌ=マリー・ミエヴィルとジャン=リュック・ゴダールを思い起させる。互いの創作にインスピレーションとして干渉し生まれる相互作用の結果がこの作品に結実となって表れているのだ。フェイスのピアノの主旋律とアーロンの残響ノイズが深奥な響きを奏でていて美しい。
Keiichi Sugimoto 『Play Music』
音楽の記憶の断片――杉本圭一による『Play Music』の主題とは、正にここにある。数多の劇伴を手掛けてきた中から厳選された楽曲群は、驚異的な音楽的レンジを誇っている。且つ散漫な印象は全く受けない。むしろ、次々と現れるあらゆる趣向の音楽が巡り、イメージ(場面の転換)を想起させる。これは一本の明瞭なストーリー性を備えた音劇である。