20150428

【レビュー】GORO GOLO 『Golden Rookie, Goes Loose』

日本ならではのハードコアR&Bパンク

GORO GOLO
Golden Rookie, Goes Loose
P-VINE, 2014年
 約22分の音楽しか入っていないCDはプレイヤーに入れて再生すると、都市生活者の変化が激しいメンタルを癒して整え肉体を揺らす。聴いた途端に素敵なBGMとして、鼻歌・エア楽器演奏・ダンス必至の作品である。それは紆余曲折を経て再びシーンに戻ってきた彼らの人生と音楽の深みが生み出したものであるからか。
 12年ぶりにフルアルバムとして出した本作。2002年アルバムを一枚だけ出して解散したバンドGORO GOLOが復活してスガナミユウ(Vo)主催の制作クルー音楽前夜社結社や、同じメンバーによるでぶコーネリアスの藤田千秋(Vo,Sax)を迎えたバンドのジャポニカソングサンバンチ結成。現在も行う新宿ロフトのバースペースでの2時間千円飲み放題の余興「ロフト飲み会」と、バンド同士の勝敗付きのトーナメント形式のライブ「ステゴロ」の開催も交えながら完成させた。こんなにも洒落た演奏なのに歌える高速パンクは実に奇跡的だ。
 音しかなくてもメンバーたちが楽しく演奏する姿が目に浮かぶ今作。J・ガイルズ・バンドの演奏が気付いたらハードコア・パンクになっていて、ハイ・スピードなソウル・レビューになってしまっていたみたいな構成である。スガナミ、きむらかずみ(Ba)、しいねはるか(Key)が創った楽曲はインストゥルメンタル6曲と歌が4曲。速くタイトでスウィング&ロールしまくるリズムに、暖かくテクニカルなキーボードとギターは様々なジャンルを呑み込む。「More Japanisch」ではオリエンタル。「theme#4」では民謡からのヒゲダンスといった具合だ。しかし「MONKEY SHOW」では黄色人種・日本人として踊る意志、「GOD SAVE THE DANCING QUEEN」では風営法とシリアスなテーマな歌詞の曲も。それすらも高速で明るく洗練された形で見せてしまうのが凄い。それは洋楽に近づくのではなく、日本人としてのアイデンティティを持ったうえでのミクスチャー感覚の音楽とパーティーを敷居低く伝えたいからといえる。
 2014年はロフトでの定期的な完全無料ライブ開催や、ジャポニカのアルバムリリース、下北沢THREEで行った数々の面白い試みなど、スガナミにとって大きく痛快な1年となった。1月8日にリリースされたこの作品は、果報を練って待った彼の中に存在するパンク性のスピード力の勝利を印象づけた14年最初の一撃だった。(小泉 創哉)

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 本原稿は今年1月にBCCKSにてリリースしました『YEAR IN MUSIC 2014』( http://bccks.jp/bcck/130107/info )に掲載した年間ベスト・ディスク・レヴューです。『YEAR IN MUSIC 2014』では、このディスク・レヴューの他にも50本以上に及ぶディスク・レヴューの他、シャムキャッツへのインタビューや書評、再発盤レヴューも掲載されております。PCまたはスマートフォンにて閲覧可能ですのでぜひご覧ください。