20150427

【レビュー】stillichimiya 『死んだらどうなる』

あの世この世に挑む笑撃的ヒップホップ


stillichimiya
死んだらどうなる
Mary Joy Recordings, 2014年
 懐かしのフレーズや時事・地元ネタをパロディと風刺で包んだ言葉遊びの楽しさが伝わるリリック。ニヤニヤが無限に襲いかかってくる。それと同時にどす黒い真理も。それを山梨県の今はなき一宮町出身の男たち5人が自由なサウンド・メイキングにのせて達者にラップしまくる。その5人とはソロで大活躍の田我流を含む結成10周年のstillichimiyaだ!
 「うぇるかむ」は三木道三がどうしても頭によぎる地元激励レゲエだと思ったら衝突音で曲が終わり、丹波哲郎の死生観を語る声が流れこのアルバムが一筋縄ではいかぬ作品であることを宣言する。そして次の楽曲である「Hell Train」に私たちは乗車して戻ることはできない。<何なら神様に送るワイロ 可愛いコンパニオン雇うガイド 天国にはマットヘルスとかないの? じゃこのまま地獄でどんちゃん騒ぎ><キング・クリムゾン聞くジャック・ニコルソン キム・ウィルソンと飲むウィルキンソンで>などのリリックでカオスと真理が伝わる地獄の描写を描く。
 零心会以上の大きな衝撃を持って虚実混じった自己紹介を5人マイクリレーする「ズンドコ節」。意味不明だけどもとりあえず生!!な感じは伝わる「生でどう?」。95年に山梨県のローカルCMで使われたことにより県内で大ヒットを飛ばした「だっちもねえこんいっちょし」をラップした原田喜照と、MC HAMMERの「You Can’t Touch This」をネタにして共演した「だっちもねえ」。過去のヒット曲のタイトルとスケベ心でノリまくる「竹の子」。〈土偶〉というキーワードから地元への思いを伝える「土偶サンバ」。などその他にも衝撃的な楽曲とスキットが聴いているあなたにクエスチョン・マークを浮かばせ、大きな感動を与えさせる。
 映画への出演や単独での音楽活動でメンバーの中でも目立った活躍を見せる田我流と、その相方でありサウンドを手掛けると共にラップもするDJのYoung-G。12年に出したソロの傑作『B級映画のように 2』では震災後のシリアスな現実世界を描写していたが、今回がっつり制作に参加したBig BenやMMM、Mr.麿によるクルーでの作品はパロディと自由な世界観で強力なユーモアに包まれる。元来クルーはこのような作風であるが、より外にも開いた高いクオリティの作品になった。さて、このアルバムを聴いてあなたは死んだらどうする?!(小泉 創哉)

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 本原稿は今年1月にBCCKSにてリリースしました『YEAR IN MUSIC 2014』( http://bccks.jp/bcck/130107/info )に掲載した年間ベスト・ディスク・レヴューです。『YEAR IN MUSIC 2014』では、このディスク・レヴューの他にも50本以上に及ぶディスク・レヴューの他、シャムキャッツへのインタビューや書評、再発盤レヴューも掲載されております。PCまたはスマートフォンにて閲覧可能ですのでぜひご覧ください。