『asatte Vol.6』の配布が始まりました。
20120929
『asatte Vol.6』掲載記事タイトル一覧
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おしらせ
岡村詩野音楽ライター講座受講生が発行している音楽フリーペーパー『asatte Vol.6』をこのたび発行いたしました。
[asatte Vol.6] 池田若菜「みんなで楽しむ、音楽の授業」
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池田若菜
小学校の頃、音楽の授業がとても好きだった。私は運動が苦手でかけっこはいつもビリ。田舎の学校でみんな体育が大好きなのに私は大嫌い。悲しい気持ちになったことも多々あった。そんな私にとって音楽の授業はいつも至福の時間であった。ピアノを弾いてくれたり、歌を歌ってくれたり、先生お気に入りのビートルズを聴いてリズムに合わせて遊んだり。運動で劣等感にさいなまれていた私も、音楽の授業ではクラスメイトと一緒になってワイワイ楽しむことができ、知らないうちに音楽は私にとって一番の得意科目になっていた。音楽と出会えたおかげで、私はその後今に至るまでに沢山の素敵な音楽友達と出会うことができて、今ではすっかり人との付き合いも得意になった。しかし、一転して中学高校の時は音楽の授業が嫌いだったのだ。なんだかもの静かな先生で「静かに」としか言わず教科書通りに進められる時間はひたすら睡魔との戦い……。西洋クラシック音楽や日本の民謡だけに光をあて、つまらなさそうに教科書を読み上げる先生を見て生徒達は皆飽き飽きしていたし、そんな音楽の先生よりもインターネットの動画サイトが音楽の先生になってしまっていた。音楽の授業で学んだことは「音楽は静かに黙って、椅子に座って、じーっと聴いていなければならない」だなんて、つまらないこと極まりない。静かに黙ってじーっと音楽を聴くのは、せめて家で動画サイトを開いて音楽を聴くときだけでいい。
音楽を通したコミュニケーションというものは、演奏を聴くことでミュージシャンと意思疎通を図ることだけではない。リスナー同士の意思疎通もコミュニケーションである。同じ音楽を聴いて良さを共有し合う、又は意見を交換し合う。同じビートに合わせて体を動かしてみんなで音楽の波に乗ってみる。普段あまり聴かないような耳に新しい音楽を先生に紹介してもらって、未知の世界をみんなで楽しむ。そうやって、ひとりきりのパソコン画面から抜け出し、実際の友人達と音楽を通した親密なコミュニケーションを体感することで音楽への好奇心は一層高まるだろう。自分一人では体験できない、みんなで音楽を楽しむことの良さを知っていくのだ。
たしかに音楽はひとそれぞれ好みも自由。「わたしはわたし、あなたはあなた」かもしれない。だが、素敵な音楽を共有し合えることの幸せも格別で、そんなふうに素敵な音楽を「みんなで楽しむ」ことの良さを教えることができる最良の場こそ、音楽の授業だ。自分の部屋のパソコン画面というパーソナル・スペースを抜け出して、コミュニケーションしながら音楽を楽しむ。そして、そのコミュニケーションの中で音楽が生徒にとって大切なものになったら、音楽の授業は大成功だ。
音楽を通したコミュニケーションというものは、演奏を聴くことでミュージシャンと意思疎通を図ることだけではない。リスナー同士の意思疎通もコミュニケーションである。同じ音楽を聴いて良さを共有し合う、又は意見を交換し合う。同じビートに合わせて体を動かしてみんなで音楽の波に乗ってみる。普段あまり聴かないような耳に新しい音楽を先生に紹介してもらって、未知の世界をみんなで楽しむ。そうやって、ひとりきりのパソコン画面から抜け出し、実際の友人達と音楽を通した親密なコミュニケーションを体感することで音楽への好奇心は一層高まるだろう。自分一人では体験できない、みんなで音楽を楽しむことの良さを知っていくのだ。
たしかに音楽はひとそれぞれ好みも自由。「わたしはわたし、あなたはあなた」かもしれない。だが、素敵な音楽を共有し合えることの幸せも格別で、そんなふうに素敵な音楽を「みんなで楽しむ」ことの良さを教えることができる最良の場こそ、音楽の授業だ。自分の部屋のパソコン画面というパーソナル・スペースを抜け出して、コミュニケーションしながら音楽を楽しむ。そして、そのコミュニケーションの中で音楽が生徒にとって大切なものになったら、音楽の授業は大成功だ。
[asatte Vol.6] 山本大記「楽器店の主役」
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山本大記
ここ数年間で楽器店の内装はずいぶん様変わりしたように思える。以前は楽器店に入ると有名なミュージシャンやギタリストの写真やポスターが目に入ってきたものだった。スラッシュやらマイケル・シェンカーやらのポスターが、彼らの使用モデルのギターの横に張り付けられていたのをよく覚えている。ところが、ここ最近は彼らの姿を楽器店で目にすることはめっきりと少なくなった。ジョン・レノンやカート・コバーンは今も変わらずよく目にするものの、楽器店においては以前よりも確実に実在するミュージシャンの影は薄くなりつつある。その代わりに急激に目立つようになったのがアニメやボーカロイドのキャラクターたちだ。特にアニメ『けいおん!』のキャラクターたちの台頭は凄まじく、彼女たちの姿を見かけない楽器店はほぼないと言ってもよいほどだ。売り場の目につきやすい場所には、だいたい『けいおん!』のキャラクターのポスターと、彼女たちの使用モデルのギターやベースが置いてある。店内には「けいおんはじめよう! 」というキャッチフレーズの書かれたビラが置かれている。キャラクター・グッズの売り上げも盛況なようだ。
楽器店の主役が3次元から2次元に取って代わられた理由は言うまでもないだろう。今の若い世代に最もアピールするのが、そのようなゲームやアニメ音楽だからだ。僕の世代がゆずやラルク アン シエル、もしくはビートルズなどにあこがれてギターを手にしたように、 今の中学生、高校生は『けいおん!』や、ボーカロイド音楽に触発されてギターを買う。僕たちがゆずの「夏色」をカバーすべくギターの練習をしたように、彼(彼女)らは「ふわふわタイム」をカバーするためにバンドを組む。
このように書くと隔世の感があるというか、状況はずいぶん変化したように思えるかもしれない。しかし、それは表面的なことに過ぎないように僕には思える。僕たちはわくわくしながらギターを手に取った。バンドを組めばなにか楽しいことが起こるかもしれない。あるいは女の子にモテるかもしれない。そんなことを思い、バンドを組んだ。そこのところは、今の世代だってあまり変わらないはずだ。そういう意味では、『けいおん!』はきっかけに過ぎない。
近年は、残念ながらロックやギター・ミュージックの求心力が以前よりも落ちつつある。チャートを見てもロック・バンドの名前を見かけることは少なくなった。そんな状況の中でもう一度バンドやギターに目を向けさせるきっかけとなったのがアニメやゲームなどの2次元文化だったように思う。もちろん良いことばかりではない。アイドルとアニメ、ボカロ音楽に席巻されている現在のチャートの状況が必ずしも健全だとは言えないだろう。それでも、少なくともロック・ミュージックの視点から2次元音楽の功罪を比べれば、功のほうが大きいと僕は思う。
だからこそ僕にはアニメのキャラクターに占拠されている現在の楽器店の状況がそんなに悪いものだとは思えないのだ。
20120922
[asatte Vol.6] 木村慶「子どもだって刺激が欲しい!!」
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木村慶
「gabba gabba」というと音楽好きならラモーンズの「Gabba Gabba Hey」が思い浮かぶだろう。いい響きでそれも悪くないが、今の欧米の子どもたちは即座にこう叫ぶだろう。「Yo Gabba Gabba! 」。いったい何のことかと思うかもしれないが、これはアメリカを中心とした、欧米諸国で大人気の子ども向け番組のタイトルなのだ。
DJ Lance Rockと5人のカラフルなキャラクターがダンスを踊ったりと、この番組は基本的に音楽メインに進行していくのだが、すごいのが色々なコーナーに呼ばれるゲストの面々。ウィーザー、MGMT、ザ・シンズ、ディーヴォ、ザ・ルーツなど、まるでどこかの音楽フェスのラインナップを見ているかのような、あまりに豪華な面子が番組内で演奏を披露しているのだ。数年前にはなんと日本からもコーネリアスが出演し「COUNT FIVE OR SIX」を演奏している。あんなロック・ナンバーを流す子ども向けの番組は、残念ながら今の日本にはない。だが、子どもたちはきっとそれを楽しむことが十分できるだろうし、その権利もあるはずだ。NHKなんかでやっている子ども向け番組も確かに引きつけられる音楽を使っていることはあるが、演奏している映像はほとんど流れないし、いわゆる歌のお兄さんやお姉さんはミュージシャンとは違う。「こんな人が歌っているのか」「あの楽器からこういう音が聴こえるのか」。そういうことを見て、聴くのは子どもたちにとって、とても刺激的な体験になるのではないだろうか。
この『Yo Gabba Gabba! 』(以下YGG)が欧米でウケている一つの要因は、今番組を見ている子どもたちの親の世代がおそらく、90年代オルタナ全盛期にちょうど多感な時期を過ごしていて、多様な音楽へと開かれているからなのではないかと思う。そう考えると日本だってビートルズが不良の音楽なんて言っていた時代からずいぶん寛容になっているだろうし、これから親になるだろう世代は『YGG』みたいなロック、ヒップホップなどが流れる番組を子どもに見せることにそれほど抵抗もないのではないかとも感じる。
さらに『YGG』はライヴ・ツアーもやっていて、いまや何十万人も動員するような人気となっている。そこでもスヌープ・ドッグなど、びっくりするようなゲストが毎回出てきては、当然のように大人たちも子どもと一緒になってライヴを楽しむ。最近では日本も大型フェスに小さな子を連れてくる親が多くなっているし、フェス側も子どもを連れて来やすいような改善をしているが、それも大人たちの場に子どもを連れて行っているような印象だ。一方でこの『YGG』のライヴは大人たちも一緒になって楽しんではいるが、あくまでも主役は子どもだ。そういう空間はとても素敵だし、ぜひ日本でも子どもたちに向けて色々な音楽が演奏される番組や場が増えていって欲しい。もしかしたら演奏を見て興味を持った子どもが、家の片隅で眠っている親が昔使っていた楽器を引っ張り出してきてバンドを組んでしまうような、そんなワクワクするようなことがあるかもしれない。
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