20120922

[asatte Vol.6] 木村慶「子どもだって刺激が欲しい!!」


「gabba gabba」というと音楽好きならラモーンズの「Gabba Gabba Hey」が思い浮かぶだろう。いい響きでそれも悪くないが、今の欧米の子どもたちは即座にこう叫ぶだろう。「Yo Gabba Gabba! 」。いったい何のことかと思うかもしれないが、これはアメリカを中心とした、欧米諸国で大人気の子ども向け番組のタイトルなのだ。

DJ Lance Rockと5人のカラフルなキャラクターがダンスを踊ったりと、この番組は基本的に音楽メインに進行していくのだが、すごいのが色々なコーナーに呼ばれるゲストの面々。ウィーザー、MGMT、ザ・シンズ、ディーヴォ、ザ・ルーツなど、まるでどこかの音楽フェスのラインナップを見ているかのような、あまりに豪華な面子が番組内で演奏を披露しているのだ。数年前にはなんと日本からもコーネリアスが出演し「COUNT FIVE OR SIX」を演奏している。あんなロック・ナンバーを流す子ども向けの番組は、残念ながら今の日本にはない。だが、子どもたちはきっとそれを楽しむことが十分できるだろうし、その権利もあるはずだ。NHKなんかでやっている子ども向け番組も確かに引きつけられる音楽を使っていることはあるが、演奏している映像はほとんど流れないし、いわゆる歌のお兄さんやお姉さんはミュージシャンとは違う。「こんな人が歌っているのか」「あの楽器からこういう音が聴こえるのか」。そういうことを見て、聴くのは子どもたちにとって、とても刺激的な体験になるのではないだろうか。

この『Yo Gabba Gabba! 』(以下YGG)が欧米でウケている一つの要因は、今番組を見ている子どもたちの親の世代がおそらく、90年代オルタナ全盛期にちょうど多感な時期を過ごしていて、多様な音楽へと開かれているからなのではないかと思う。そう考えると日本だってビートルズが不良の音楽なんて言っていた時代からずいぶん寛容になっているだろうし、これから親になるだろう世代は『YGG』みたいなロック、ヒップホップなどが流れる番組を子どもに見せることにそれほど抵抗もないのではないかとも感じる。

さらに『YGG』はライヴ・ツアーもやっていて、いまや何十万人も動員するような人気となっている。そこでもスヌープ・ドッグなど、びっくりするようなゲストが毎回出てきては、当然のように大人たちも子どもと一緒になってライヴを楽しむ。最近では日本も大型フェスに小さな子を連れてくる親が多くなっているし、フェス側も子どもを連れて来やすいような改善をしているが、それも大人たちの場に子どもを連れて行っているような印象だ。一方でこの『YGG』のライヴは大人たちも一緒になって楽しんではいるが、あくまでも主役は子どもだ。そういう空間はとても素敵だし、ぜひ日本でも子どもたちに向けて色々な音楽が演奏される番組や場が増えていって欲しい。もしかしたら演奏を見て興味を持った子どもが、家の片隅で眠っている親が昔使っていた楽器を引っ張り出してきてバンドを組んでしまうような、そんなワクワクするようなことがあるかもしれない。