アルバイトの関係で、小学生の子どもたちと触れる機会が多い。ある時、いつものように子どもたちと話をしていると、いきなり「ちゃらりーん♪鼻から牛乳〜♪」と歌いだした子どもがいた。現在大学生の私でも、「かつて流行した」程度の認識の替え唄を、なぜひと周りも違う彼らが知っているのか疑問に思い、尋ねてみた。すると、テレビ番組で見て覚えた、というのだ。
毎週月曜日~金曜日に放送されている夕方の30分番組『ピラメキーノ』(テレビ東京系)で、再ブレイクを果たしている嘉門達夫という人物がいる。彼は以前も幾度か“替え唄”ブームを巻き起こしたが、最近では子供向けに替え唄CDを発売し、コンサートでも観客の半分近くが子どもということもあるらしい。とにかく子どもを中心に替え唄が再流行しているようなのだ。
嘉門氏の替え唄は、それこそ子どもが作ったような単純な面白い歌詞で、誰でも知っている流行歌や歌謡曲から、民謡、クラシックまで幅広い分野の音楽を使用する。そして『ピラメキーノ』では、その替え唄を簡単なイラストと共に紹介している。唄にイラストを加えればさらに分かりやすいし、子どもたちは自然と唄を覚えて口ずさんでしまうのは間違いないだろう。また、この番組は子どもたちだけではなく、かつてのブレイクを知っている親世代の人々も一緒に楽しめる。思わずクスッと笑ってしまうし、場の雰囲気を和ませてくれるのだ。
一方で、子どもたちが好む替え唄は時として無慈悲であったり、はっきりと思ったままの意見が歌われているものも少なくない。それを彼らは面白いと平気で笑う。そのような感覚は、大人になるにつれ、無意識に抑制されてしまうものだ。これらの替え歌からは子ども独特の純粋さと残酷な想像力が見え隠れしているのだ。
替え唄は、単なる言葉遊びである一方で、どんな時代にも子どもたちの生活の中にあった音楽の一つでもある。生活のすぐ近くに転がっている音楽は、子どもたちの想像力を広げていくことに役立つ。子どもたちは、替え唄のような些細なものから、気付かないうちに、音楽と言葉の繋がりや関係性を知っていくのではないだろうか。そして、子どもたちと替え唄を共有することによって、私たち大人も音楽の楽しみ方を思い出すことができるのかもしれない。