その“何か”とは、人に笑われたり、厨二病乙などと揶揄されたりと(もしくは実際に自分はされなくても人がされているのを見て)、これでは生きづらいと抑えるうちにもう一度引っ張りだすことができなくなってしまったものだ。
だから今までと逆にそれを持ったままでいいんだなと思える場所にいることが大事なのである。そんな時、SEBASTIAN
Xの音楽はそうありたいと思う方向を照らす明かりのようだ。
彼女たちの特徴である、“ユニコーン”や“怪獣”、“スピカ”などの空想的なセンテンスが散りばめられた児童小説のような文学性、彩る音の鮮やかさと勢いのあるポップさ、巷で有名な「なんか凄いことになっているらしいインパクト大のパフォーマンス」に感じるのは、限界を知らず走り回って遊ぶ子どもの眩しさだ。
しかし、私はSEBASTIAN Xをそのまま子どものような賑やかなバンドだと受け取っているのではない。自分の中の子どもを侵されないように闘う大人だと感じるのだ。特に象徴的なのはセカンド・ミニ・アルバム『僕らのファンタジー』のM5「サファイアに告ぐ」だ。ライヴでもほぼ必ず演奏されるこの曲はSEBASTIAN
Xの核なのではないかと勝手ながら思う。“サファイア ああサファイア! 君は誰よりも美しく サファイア ああサファイア! 宇宙の揺籠で眠る愛の子供”という力強い歌い出しで始まるこの曲は、序盤の叩き付けるような激しいピアノに乗って、現実の厳しさに疑問を投げかけ闘い挑むエネルギーがうねりを上げて盛り上がっていく。
“宝物の山燃やし尽くし 歴史の山を燃やし尽くし それでも美しいといえる? 世界はばらばらになった!”と歌い放つと、曲調は一転し、夢を見るようにファンタジックな言葉が紡がれる。なかでも不思議なのが“空を飛ぶ魚”や“流星のストローク”と並列で“笑い合う食卓”や“毎日埋まる絵日記”といった日常的な場面を歌い上げていることだ。だが、これこそSEBASTIAN
Xの肝である。彼女たちが描くのは全くの空想の世界、子どもの世界ではない。当たり前だと言われるような日常がファンタジーのように美しいことを知った〈大人〉が見る、現実や日常の中に眠るファンタジーだ。だからこそ、世界の中で自分が何者にでもなれ、目に見えない何かがあり、何をどう見てもどんな膨らませ方をしても良かった頃の童心を守り抜く彼女たちは光り輝いている。
永原真夏(Vo)の、様々なことに戸惑いながらも、笑顔で駆け抜けていく勇ましい姿はジャンヌ・ダルクのようで、その後に続きたくなるのだ。この曲の終わりで彼女は“次は僕らの時代だ サファイア!”と告げている。馬鹿みたいだと笑う大人の時代は終わらせよう。濁りそうならば闘うようにSEBASTIAN Xを歌おうと思う。
<最新作品情報>
2012/07/11 Release
SEBASTIAN X
New Mini Album
『ひなぎくと怪獣』
RDCA-1024/¥1890(tax-in)
初回生産盤のみ"CD+DVD"の2枚組仕様 ※初回生産盤はなくなり次第終了
[初回生産盤 商品内容]
・CD全6曲入り
・DVDにはアルバム収録曲のMusic Video2本とSEBASTIAN X主宰野外イベント「TOKYO春告ジャンボリー」のライブ映像6曲を収録
2012/7/11リリース New mini album『ひなぎくと怪獣』トレーラー
<最新作品情報>
2012/07/11 Release
SEBASTIAN X
New Mini Album
『ひなぎくと怪獣』
RDCA-1024/¥1890(tax-in)
初回生産盤のみ"CD+DVD"の2枚組仕様 ※初回生産盤はなくなり次第終了
[初回生産盤 商品内容]
・CD全6曲入り
・DVDにはアルバム収録曲のMusic Video2本とSEBASTIAN X主宰野外イベント「TOKYO春告ジャンボリー」のライブ映像6曲を収録