スマート社会で豊かに生き抜く音楽とは?

今年、東京のインディ・シーンを象徴したのは吉田ヨウヘイgroup(以下YYG)だった。森は生きているやROTH BART BARONら、このシーンを代表するバンドが出演したイベント「20140420」でトリを務め、フジロック・フェスティバルのルーキー・ア・ゴーゴー、One Music Campなどのフェスへ参加、ルミナス・オレンジの新譜への参加。そして何よりも、活発な活動の中リリースされた本作がそれを物語っている。
彼らはその名の通り、吉田ヨウヘイ(Vo, Gt, A.sax)を中心とする8人組ロック・バンド。ロック・バンドといっても、サックス、フルート、ファゴットら木管楽器のウエイトが高いのが特徴的だ。特にファゴットという楽器はソロから伴奏まで高低音を問わない音域を持ち、音量の小ささというネックがあるにも関わらず、バンド内で骨組となるメロディを担当するなど生き生きと鳴らされている点は素晴らしい。
ファースト・アルバム『From Now On』以降1年3か月ぶりとなる本作は、OK?NO!!のriddamを含むメンバー・チェンジ後、初作品となる。ジャズから始まりファンクやニュー・ソウル的アプローチもあり、彼らの音楽は複合的で例えるのが難しい。具体的なコレというものは挙げにくいが、あえて言えば彼らの音作りはロネッツやカーデッツのようなコーラスにルーツがあると考える。YYGでは、メンバー8人のうち女性3人全員が楽器の他にコーラスを担当している。"ラララ" "ハハハハ"のような、スキャット的コーラスと楽器が絶妙な間を持って掛け合い、対話することで完成する流れは心地がよく、声も楽器の一部として組み込まれている様子をしっかりと感じられる。そういった手法を総括すると、音楽性は違えど方法論としてはルミナス・オレンジと近いものを感じた。先述の新譜ゲスト参加は必然的か。
本作収録曲を引っ提げたフジロックでの公演以来、木管の音量やバンドのバランス共に絶好調で今めきめきと成長を感じられる彼ら。ファゴット・内藤彩の脱退は残念であったが、不景気な現代社会で鳴らされる彼らのアットホームで豊かな音楽は、今年のインディ・シーンが好景気であるという何よりの証拠となった。今年は東京インディを象徴したが、来年以降の彼らが、東京インディという言葉では描き切れない新たなシーンを形成してくれるのを楽しみにしている。(梶原 綾乃)
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本原稿は今年1月にBCCKSにてリリースしました『YEAR IN MUSIC 2014』( http://bccks.jp/bcck/130107/info )に掲載した年間ベスト・ディスク・レヴューです。『YEAR IN MUSIC 2014』では、このディスク・レヴューの他にも50本以上に及ぶディスク・レヴューの他、シャムキャッツへのインタビューや書評、再発盤レヴューも掲載されております。PCまたはスマートフォンにて閲覧可能ですのでぜひご覧ください。