Kidz Rec.の盟友、ふたりの邂逅

2013年3月にBandcamp上でミニアルバム『Andersons』をリリースしてから約1年半。お互いに80kidz主宰のKidz Rec.より楽曲をリリースしていたKentaro(a.k.a. Scottish Fold)とDominikaのふたりによるAndersonsが今年9月、待望のアルバム『Stephen & Emily』を発表した。
アメリカの片田舎に住む冴えない兄・ステファン=Kentaro(Gt.)と妹のエミリー=Dominika(Vo./Piano)兄妹が退屈な日常を変えるために音楽を始めるというストーリーを結成のコンセプトに持ち、シンプルなサウンドとメロディ・ラインにより展開される全9曲を聴いていると、自由に自然体で音楽を楽しむふたりの姿が目に浮かぶようだ。
Kentaroのメロディ作りのセンス、またソロ活動時の作品にもあらわれているDominikaの歌唱力と表現力の光るこのアルバムの中でも、2曲目に収録された「Young Love」には特に注目してほしい。幼くて心が締め付けられるような恋心をDominikaが豊かな表現力で歌い上げている。また、イントロのメランコリックなメロディ、ベースのシンプルな進行も気分を盛り上げてくれる。相手のことが好きすぎてクローンを作ってしまった女性が主人公の映画『さまよう小指』のテーマ曲としてこの楽曲が起用されたことには必然を感じずにはいられない。また8曲目の「Last Summer」では、過去にScottish Fold名義で発表された楽曲やリミックス作品にも共通して感じとれるメランコリックさやノスタルジックさをいっそう感じられ、当時からのファンである自分もおおいに喜ばせてもらった。
Webメディア〈インディーズライフ〉でのインタヴューによると今年某有名女性J-POPアーティストに楽曲提供を行っているのだが、なんと今年9月のアルバム発表前、Bandcampでのみ音源を発表していた段階でアーティストのA&Rから声が掛かったという話もおもしろく、今後はどんなところから声が掛かってしまうのか僭越ながらとてもわくわくしている。11月に渋谷で観たライブでは、タイトで眩しい衣装に身を包み表現力豊かにリズムに合わせダンスしながら歌うDominikaの姿から目を話すことができなかった。2015年の彼らの飛躍が楽しみでならない。(Ayumi Ota)
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本原稿は今年1月にBCCKSにてリリースしました『YEAR IN MUSIC 2014』( http://bccks.jp/bcck/130107/info )に掲載した年間ベスト・ディスク・レヴューです。『YEAR IN MUSIC 2014』では、このディスク・レヴューの他にも50本以上に及ぶディスク・レヴューの他、シャムキャッツへのインタビューや書評、再発盤レヴューも掲載されております。PCまたはスマートフォンにて閲覧可能ですのでぜひご覧ください。