20150522

【レビュー】SHAKALABBITS 『Hallelujah Circus Acoustic』

初のアコースティック・アルバムに詰めた想い

SHAKALABBITS
Hallelujah Circus Acoustic
Hallelujah Circus Inc., 2014年
 SHAKALABBITSといえばパンク・ロックというイメージが強いであろう。しかし、この作品はなんと彼等にとって初めてのアコースティック・アルバムである。彼等とアコースティック音楽というのは意外な組み合わせに思えるかもしれないが、メンバー自身、アコースティックの音楽を聴くのが好きで、いつかはアコースティック・アルバムを作りたいなと話していたとUKIのブログに綴られている。それがとうとう完成したのだ。
 最初に流れてきたのは、アコギが奏でるノリのいいイントロであった。一曲目の「MutRon」は、原曲はおどろおどろしいイントロから始まり、奇妙で不思議な歌詞が印象的な曲であったが、その印象はまったく消え去っていた。UKIの歌い方も少しかわいらしい感じになっていて、奇妙な歌詞がなんだか楽しく思えた。アレンジによって、こんなにも原曲の印象を覆されてしまい、一曲目からこの作品の魅力に引き込まれてしまった。「モンゴルフィエの手紙」のような、原曲がアコースティックっぽい曲もアレンジされている。初めて収録曲を知ったとき、アップテンポな曲が収録されていることよりも、このような曲があえて収録されていることのほうが驚いた。この曲も自然と身体を横に揺らしたくなるリズム感で、UKIが吹いているハーモニカの伸び伸びとした音色が心地良い。そしてさりげなく奏でられているヴァイオリンの音色が、この曲の切ない雰囲気にぴったりである。「ROLLIE」はライブで演奏すれば絶対に盛り上がる彼等の代表曲であるが、それがもうよくもこんなにやってくれたな!というくらい別世界になっていた。エコーの効いたアコギの音色と子守唄のように優しいUKIの歌声が、まさに夢の中にいるかのようにただただ広がっていく。おちゃめな小さい女の子のような原曲が、綺麗な大人の姿に生まれ変わったように感じられた。
 「Jammin'」という曲に〈ハレルヤサーカスの鳥たち波に乗った〉という歌詞がある。このアルバム名はこの歌詞からきていて、同じ名前を彼等が立ち上げたレーベルにも名づけている。この歌詞のように、この作品は彼等にとって思い入れのある記念すべき作品であり、今後に繋がる大事な作品でもあるだろう。これが新たな彼等の出発点なのだ。たくさんの想いが詰まったこの作品を、ファンはもちろんSHAKALABBITSの音楽を聴いたことのない人達にも聴いてほしい。(日高 玲央奈)

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 本原稿は今年1月にBCCKSにてリリースしました『YEAR IN MUSIC 2014』( http://bccks.jp/bcck/130107/info )に掲載した年間ベスト・ディスク・レヴューです。『YEAR IN MUSIC 2014』では、このディスク・レヴューの他にも50本以上に及ぶディスク・レヴューの他、シャムキャッツへのインタビューや書評、再発盤レヴューも掲載されております。PCまたはスマートフォンにて閲覧可能ですのでぜひご覧ください。