20150222

YIM2014著者による年間ベストディスク(堀中敦志編)

今年1月にBCCKSよりリリースされた『YEAR IN MUSIC 2014』についてはBCCKS人気ランキング1位を達成するなど、多くの方にご覧いただき本当にありがとうございます。
この『YIM2014』に連動したブログ企画として、各著者による年間ベストディスクのショートレビューをお送りします。ぜひそれぞれの著者にも注目し、引き続き『YIM2014』楽しんで頂ければと思います。
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著者:堀中 敦志

掲載原稿

Year in Music 2014
  • THE NOVEMBERS『Rhapsody in beauty』
  • 
FKA twigs『LP1』
  • Co/SS/gZ(コーパスグラインダーズ)『Kr/A/sH!≪音圧鬼盤≫』

年間ベストディスク2014

PLASTIC GIRL IN CLOSET『eye cue rew see』


 2014年を振り返ってみて残念に思うのは、やはりこの作品が十分に評価されていないということだ。男女ツインボーカルと耳の奥にじわっと溶けていくシューゲイズ・サウンドはこのバンドの10年余りの活動を凝縮したもので、海外のドリームポップ勢と比較してもここまでメロディーの充実を見せる作品は他に思いあたらないかと。岩手県人の朴訥とした人柄もまた魅力的な3人組。

大森靖子『洗脳』


 音楽的な観点でJ-POPという音楽にセオリーはなく、ただ多くの人に聴かれることだけがその曲をJ-POPにする魔法なのだとして、その魔法への強烈な羨望の名の下に、「大森靖子」というエゴが擦り切れるギリギリのところまで研ぎ澄ましてしまった「J-POPになりたい曲」が詰まったアルバム。アンダーグラウンドから万人受けを目指す様は、いびつに美しいと思う。

ANTEMASQUE『ANTEMASQUE』



 アット・ザ・ドライヴインの01年の解散からザ・マーズ・ヴォルタでの活動、そして11年の再結成を経てまだ同じバンドをやっているセドリック・ビクスラーとオマー・ロドリゲス。しかし、この作品で見せる相性の良さと妖しい輝きは、本作がこの腐れ縁コンビの最高傑作であると確信できる快心作。ねっとりした質感の魅力は、この2人の間にしか起きない化学変化からくるものだ。

THE NOVEMBERS『Rhapsody in beauty』


 海外で知られている日本の人気バンドとは何か。toe?envy?MONO?BORIS?あぁ、勿論そうだ。でも、近いうちにこのバンド、”THE NOVEMBERS”の名前をみんな挙げるようになるのではないか。言葉も国境も簡単に飛び越えられるだけの美しさが、このアルバムには丁寧に込められている。

White Lung『Deep Fantasy』


 USインディーとメタルを飲み込んでサイボーグ化したモーターヘッド。生き急ぐハードコア。攻守の割合を100:0で攻め抜いた10曲22分。えげつないです。

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堀中 敦志 @deathtofalse

20150219

YIM2014著者による年間ベストディスク(夏梅実編)

今年1月にBCCKSよりリリースされた『YEAR IN MUSIC 2014』についてはBCCKS人気ランキング1位を達成するなど、多くの方にご覧いただき本当にありがとうございます。
この『YIM2014』に連動したブログ企画として、各著者による年間ベストディスクのショートレビューをお送りします。ぜひそれぞれの著者にも注目し、引き続き『YIM2014』楽しんで頂ければと思います。
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著者:夏梅実

掲載原稿

Year in Music 2014
  • ザバダック『プログレナイト2014』
  • 初音階段『恋よ、さようなら』
音楽書評
  • 大坪ケムタ・田家大知『ゼロから始められるアイドル運営』
再発レビュー
  • コンピレーション『Light Mellw Avenue ~ビクター編』
  • タキオン『タキオン』
  • マリア観音『犬死に トゥー・マッチ・エディション』
  • ナチコ『薬屋の娘』

年間ベストディスク2014

ザバダック『プログレナイト2014』


 2012年から続く3度目となる「プログレナイト」を収録したライブ盤。2014年の日本のプログレの最重要作品であるとともに、最近のライブでは定番となった今のザバダックの重要曲である福島民謡のロックアレンジ版「相馬二遍返し」を初めて収録した作品として記憶されることになるだろう。これ以降も2014年秋のプログレツアー、2015年春のプログレ祭りが続いており(?)、2015年の「プログレナイト」にも今から期待が高まる。

初音階段『恋よ、さようなら』


 非常階段がボーカロイド・初音ミクをパートナーに選んだプロジェクト、初音階段(初音ミク+非常階段)。前年リリースの邦楽カバー編に続く洋楽カバー編だ。ケイト・ブッシュ「嵐が丘」、キングクリムゾン「風に語りて」など絶妙なセレクトの9曲に初音ミクのボーカルとJOJO広重のノイズギターが新たな息吹をもたらしている。

エレクトリック・アストゥーリアス『エレメンタルズ』


 エレアスの待望の2ndアルバム。ライブバンド、エレアスだからこそのライブでの演奏を通じて完成度を高めてきた曲ばかりなので、リリース時点でライブでおなじみのバンドの代表曲集になっている。2014年は「Cruise to the Edge」で海外の新旧メジャーバンドとの共演を果たし、「日本の現役プログレバンド代表」の枠を大幅に超える活躍を見せた。2015年もアコースティックやマルチのアストゥーリアスと合わせて大山曜のアストゥーリアス・プロジェクトの躍進から目が離せない。

金属惠比須『ハリガネムシ』


 2014年11月リリースながら、ライブ会場などごく一部でしか販売されていなかったこともあり、2014年作として十分な認知を得ることができなかった不利があったが、2015年2月から本格的に全国ディストリビューションが始まり、一気に評価の高まっている重要作。10年以上の活動歴を誇り、メキシコでライブを行うなど海外での評価も高い金属恵比須だが、バンド史上最強のメンバーによる本作でブレイクスルーを果たした。気鋭のシンガーソングライター入江陽がゲストボーカルとして参加している。

ムーンダンサー/タキオン『トリロジー-クロニクル(1977-81 デモ&アンリリースド・ライブ)』


 厚見玲衣の率いるムーンダンサー、タキオンが2013年5月に奇跡の再結成ライブを果たした。そして2014年の夢の続きは、怒涛のリリースラッシュ。オリジナルアルバムの再発、前年ライブの2枚組と来て、3CD+DVD+豪華ブックレットで出た本作は両バンドのすべてを知ることのできるまさに決定版だ。ムーンダンサーの日本語の歌詞に書き換えられる前の洋楽志向の英詞バージョン、スタジオ作を遥かに凌ぐタキオンのライブの丸ごと収録など、当時これらが世に出ていれば、日本のロック史が変わっていたであろうと思わせる、貴重かつ必聴の音源集。

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夏梅実
英伊仏独西、北欧・東欧・南米・日本及びアジア各国のプログレを新旧問わず愛聴するプログレファン。目白新宿の専門店巡り、神保町での音楽古雑誌漁り、ヤフオクでの珍盤探しが日課。マニアというほど究めてません。

20150210

YIM2014著者による年間ベストディスク(小林ヨウ編)

今年1月にBCCKSよりリリースされた『YEAR IN MUSIC 2014』についてはBCCKS人気ランキング1位を達成するなど、多くの方にご覧いただき本当にありがとうございます。
この『YIM2014』に連動したブログ企画として、各著者による年間ベストディスクのショートレビューをお送りします。ぜひそれぞれの著者にも注目し、引き続き『YIM2014』楽しんで頂ければと思います。
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著者:小林ヨウ

掲載原稿

 2012
  • BiS『IDOL IS DEAD』
  • Flying Lotus『Until the Quiet Comes』
  • QN『New Country』
  • きゃりーぱみゅぱみゅ『ぱみゅぱみゅレボリューション』
  • (((さらうんど)))『(((さらうんど)))』
2013
  • Negicco『Melody Palette』
  • OGRE YOU ASSHOLE『confidential』
2014
  • Especia『GUSTO』
  • NOPPAL『SUMMER EP 2015』
  • 菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール『戦前と戦後』
  • 坂本慎太郎『ナマで踊ろう』

年間ベストディスク2014

クリープハイプ『クリープハイプ名作選』 


 レコード会社移籍にあたって本人たちの意向とは異なる形でリリースされたベスト・アルバム、とのバンドからの声明。その後、ベストと同じ曲順でのライブ配信、と話題に。(曲順にはレコード会社側のバンド愛を感じたのだけど)
 それは置いておいても、2000年代以降の邦楽ロックのいいとこ取りのようなメロディアスな楽曲と、とにかく印象的な尾崎世界観の甲高いヴォーカル。本流でありながら、明確な個性を持つバンドであることを振り返ることのできるアルバム。

Rinbjo『戒厳令』


 OMSBらSIMI LAB.勢にQN(菊地一谷名義)、I.C.Iなど、菊地成孔のラップ関連のメンバーが一挙に登場する菊地凛子のデビュー・アルバム。ボーカルとしての経験が浅い菊地凛子の歌唱に対しては過剰編集/無編集のメリハリをつけ弄ぶ一方で、ラップ/リーディングによる非歌唱的な楽曲では、役者としてだけではなく天真爛漫な本人のポテンシャルを爆発させている。
 収録曲では韓国のラッパーPaloaltoの攻め立てるようなラップをメインとした「反駁」、DJ TECHNORCH(ペン大の受講生だったらしい)のアブストラクトなトラックの上で菊地凛子とオダトモミ(ex.DCPRG)ががなりたてる「空間虐殺」が圧倒的。

OMSB『OMBS』


 ラッパー/トラックメーカーであるOMSB(ex.SIMI LAB.)の2枚目のCDリリース。収録曲中ラップは2曲のみで、インストのビートがメイン。アルバム全体で徹底してクールなトーンは崩さない一方で、音の壁のようなビートのループでごりごりと推進していく「Str8 Killa」が特に印象的。田我流が参加した最後の「Porno Graph」まで完璧な流れでアルバムが進行。

TADZIO『TADZIO II』


 こんなバカみたいで研ぎ澄まされていてかっこいいバンドはそうはいないです。

昆虫キッズ『BLUE GHOST』


 東京インディー・シーンを先取りしたような洗練されたポップ・センスを持ちながら、入力過剰で、音とか感情とかがぐちゃぐちゃのまま押し寄せてきたり、その逆で言い淀むかのように演奏が急に詰まったりする彼らの音楽。本作も1曲目「GOOD LUCK」から感傷が全開。2015年1月に解散。

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小林ヨウ @MM__N__N