asatte Vol.10「まつりと音楽」では惜しくも掲載ができなかった素晴らしい原稿を
WEB版として公開しております。今回は沖縄生まれの新垣さんに執筆いただきました。
祭りと音楽がつなぐもの
祭りは地域性が色濃く出るものだと思うが、それに付随する音楽も比例して特徴あるものが多い。私が生まれた沖縄も独特の音階と踊りで形成されている。
「イーヤーサーサーハーイヤー」という掛け声と共に、太鼓の音と三線の音が交差する。大きな指笛の音でリズムを取り、それに合わせて踊るのが小さい頃の祭りの記憶である。エイサーといわれるそれは、沖縄伝統の踊り。地域ごとに祭りと化して頻繁に行われている。お盆にご先祖様を天国へ送り出す儀式であるということを小学校高学年の頃に知ったのだが、それまでは歌って踊るイベントごととしか思っていなかった。
「祭り」の語源や原義を調べれば、元々は神仏や祖先を慰めたり祈願したりする儀式や行為なので、使われる音楽も念仏歌が多いかと思いきや、恋愛や笑い話を題材にしているものも多いという。最近ではTHE BOOMの「島唄」やBEGINの『島人ぬ宝』など、現代音楽も使われていることから、形態をとどめず時代とともに進化している。当たり前のように踊ったり歌ったりしているが、先祖を敬うためのデリケートな行為でも、神様と私たちの領域を音楽と踊りがつないでくれているものかもしれない。
そんな伝統的な祭りにも触れながら、米軍基地に囲まれた地域で生まれたこともあり、異文化祭りにも親しんできた。アメリカの独立記念日を祝うカーニバルは、その日だけ閉ざされていた基地のゲートが一般にも開放される、県民とアメリカ人が交流できる唯一の場だ。アメリカ国歌やロック、カントリー、ヒップホップ、レゲエまで様々なジャンルの音楽が飛び交う。行き交う人々や雰囲気にのまれ、どこか違和感や怖さを子供ながらに感じていたが、流れる音楽だけは街中でかかっているものとあまり変わらない。ビール片手にリズムを取る人、陽気に踊る人、知らないもの同士が一緒に歌っている姿は徐々に安心感をおぼえ、空気をフラットにする。そこには国境、人種、年齢、性別も何もない、ただ純粋に人同士がつながっている。
音楽フェスもカーニバルに近いかもしれない。空間を共有し、一体感を生み出す。純粋に音楽が好き、聴きたい、楽しみたいと思う知らない者同士を引き合わせる。人がそれを重んじる限り、人と人とをつなぐツールとして祭りやフェスが絶対的に無くなることはないだろう。(新垣友海)