20130817

[Live Report] 吉田ヨウヘイgrorup @渋谷7th Floor(2013.6.15 with 森は生 き ている/ROTH BART BARON)




2ヶ月前の6月15日、渋谷の7th Floorで行われた吉田ヨウヘイgrorup『FROM NOW ON』レコ発ライブ森は生きているROTH BART BARONという飛ぶ鳥を落とす勢いの二組も招いてのイベントは、東京の新世代フォーク・ロックの担い手たちが集まったという意味でも、2013年上半期におけるシーンのハイライトとも言える瞬間だったのではないだろうか。

リーダーの吉田が講座の受講生だった(!)縁もあり、当講座からも数名の講座生が会場に赴き、ライブを楽しんだ。そこで今回は、講座生2名によるクロスレビューという形で、その日の模様をお伝えしたいと思う。

ちなみに吉田ヨウヘイgroupは今週末の8月18日、下北沢のモナレコードで東京のネットレーベル Ano(t)raks 主催のイベントにも出演予定。もし、週末の予定がまだ決まってない人は、このレポを読んで考えるのも一興かも?

それでは、レポートをどうぞ!

練られたサウンド・メイクや軽妙な風景描写。今年3月にリリースされた吉田ヨウヘイgroupのファースト・アルバム『From Now On』は、凡百のバンドには真似出来ない、高いセンスの詰まった傑作品であった。その作風は、先行して比較対象にもなったダーティー・プロジェクターズの存在だけでなく、70年代和製フォーク・ロックにも通じており、さらに深読みすれば、スティーヴ・ベレスフォードのような、どこか遊び心を交えたフリーキーな音響空間をも垣間見ることが出来た。他にもあらゆる音楽の香りが染み込んでいることが、飽きずに楽しめた要因のひとつに思える。当然のことながら総じて評判は高く、筆者を含め夢中になったリスナーは多かったに違いない。

そして待望のレコ発。丁寧に構築された楽曲がライヴではどう響くのか。どうしても、過剰に期待してしまってはいた。が、いざ始まった演奏は、その期待をも凌駕するほど逞しく、ストレートに胸に突き刺さるものであった。大袈裟かもしれないが、心が打ち震えてしまっている自分がそこに居た。なるべく至近距離で観ようと、前列で体験したそのパフォーマンス。決して派手さを装っているわけではない。それでも一心不乱に演奏される姿と、鳴らされる音には色気を感じた。

直列に繋がれた10個近いエフェクターを、いとも簡単に捌くギターは、このバンドをロック・バンドとして語るに十分すぎるほどの素養を感じた。ミュートを効かせつつ、生きの良いリフがテンション・コードに絡み、美しいハーモニーを生み出すのも、はっぴいえんどの『夏なんです』に匹敵するぐらいの心地よさだ。さらにはヴォーカルの不思議な手触り。別段太くもないのに音源以上に通りの良かったその歌声には、Pファンクに倣いPソウル・ヴォイスと名付けたくなる。ドラム、ベース、キーボード、管楽器。コーラスも含めすべての音がクリアに聞こえてくるところに、その配置へのこだわりが見てとれた。また、各々の役割が明瞭に機能しているのも粋に感じる。例えば、後方に位置したベース、ドラムの音が時折、前面にフィーチャーされるその妙は特に印象的であった。このリズム隊が演じた“二列目からの飛び出し”に、観る者は裏()を取られてしまったはずだろう。

アルバム曲以外に、新曲も披露してくれたのだが、これがまた高揚感を追求したかのように繰り返しのフレーズによるグルーヴが冴えまくりで、筆者の心を鷲掴み。早速次のアルバムが楽しみになっている。今後は、関東だけでなく名古屋や京都でもライヴ予定のある吉田ヨウヘイgroup。雑食性だけでなく、親しみやすさをも伴った柔軟性を備えているこの音楽は、全国区で売れるべきだ。
(肥後幸久)

温かい空間になっていた。元々が暖色で統一された落ち着く空間であり、ライヴ中のMCにも緩い雰囲気をつくる要素があったかもしれない。しかし楽曲に対するこだわりが感じられて、歌心がある演奏が響いた結果、そこにいる人々の心の温度が上昇したのが、あの日の温かさの大きな理由であると私は考えた。

そんな中、主役の吉田ヨウヘイgroupは素晴らしかった。今回のレコ発ライブを迎えるにあたって、アルバムの録音時から、様々な事情によりメンバーのほとんどが脱退するというピンチがあった。事実、ボーカルの吉田ヨウヘイはバンドが存続できるかにも不安があったという。だが、それを乗り越えての演奏はCD以上に惹きこまれるものであった。

彼らの音楽性は、時折変わった音を見せるも良い鳴りをみせる洋楽的なギターと、24拍目を強調したロックの基本ビートと比べるとジャズの香りがあるリズム隊、そしてフォークの影響が感じられる歌(コーラス)やメロディなど、深く多彩なものだ。だがそれ以上に特筆すべきは、誰でも入ってきやすい親しみやすさにある。これは何となく、幼少時に「ポンキッキーズ」や「みんなのうた」で聴いたミュージシャンの提供曲が、大きくなってから聴くと実は凝っていたという感覚に近い(そういえば、彼の声は大江千里に似ている)。その日は、ライヴの視覚面でのインパクトや会場の空気も手伝って、それがより伝わってきた。

普通の男女7人による、ファゴットやフルート、サックスなどの管楽器も交え、各々のキャラクターが立った楽器の奏でる、リズムとリフ、そしてハーモニー。それは懐かしさを感じさせるが、ステレオタイプな音楽のフォーマットとは違う、ユニークなものであった。その様によって、観ているこっちにも、楽器を弾くこと、一緒に奏でる楽しさが伝わってくる。特にアルバム発売後に加入した池田若菜の活躍が目立った。アルバム収録曲でもある「暗い部屋」は新たに彼女のフルートが入ったアレンジで、成長や悩みについての歌詞も手伝って心が洗われるようであった。新曲もバンドの新たな一面を見せる艶と高揚感があり、早いリリースを望みたい。

その日、対バンしていたROTH BART BARONと森は生きているにも同じように、一見普通の人たちのようで有りながら、音楽に対する強いこだわりと歌心を感じた。これが今の、東京のロックにおける動きなのかもしれない。音楽に対する高い知識と表現を備えながら、たとえその予備知識が無くても凄い・良いと感じさせる。年末にはどうなっているだろうか。楽しみだ。
(小泉創哉)

最後に8/17時点での吉田ヨウヘイgroupのライブ・スケジュールを。
最新情報は下記ウェブサイトで確認できる。

818日(日)@下北沢mona records
Ano(t)raks主催イベント
w/Slow BeachTourist & Soundtracks、カナタトクラス

829日(木)@代官山 晴れたら空に豆まいて
「遊びの構造」
w/
次松大助(バンド編成)KONCOS
開場1830/開演1930
前売り2500円、当日2800

917日(火)@渋谷o-nest
Adam Evald来日公演
w/YakYakYak,ORDINARY PURPOSE PLUG AND INVITATION,No man No girl,Adam Evald

1116日(土)@南池袋music org
詳細未定

(ご予約はyoshidayoheigroup@gmail.comまで)




20130804

FUJI ROCK 2013 新旧講座生 Report

ロック好きの聖典、FUJI ROCK FESTIVAL

http://www.fujirockfestival.com/

今年も苗場のスキー場で7/26~28の三日間開催され、アレも観たいコレも観たいという嬉しい絶叫を巻き起こしながら盛況に終わった・・・ようです!!

そう、何を隠そう、asatte+ひとり編集部こと佐藤、今年もまたFUJIを体験できないまま夏を終えるのです。でも、そんな僕でも、そんな僕だからこそ、気持ちだけでもFUJIを味わいたい!「いや今年のベストアクトはラマーっすよ、やっぱ」とかドヤ顔したい!

ということで、やってみました。

ライター講座生 FUJI ROCK FFESTIVAL緊急アンケート!


新旧講座制入り乱れ(やや旧多!)のレポーター陣によるなんとも楽しげな記録。FUJI開催からわずか一週間。まだまだ悔しい想いを拭い切れない方も、まだまだ余韻に浸ってる方も、ぜひお楽しみ下さい!!!

name
 生坂知春(医療従事者)
best act
 THE BAWDIES
comment
 最近のライブでのTHE BAWDIESは表情が硬く、本人たちが楽しんでいるようには見えなかった。だが、フジロックでのライブは違った。満面の笑みを浮かべ、グリーンステージで演奏できることを噛み締めるようだった。それはきっと、普段はバンドとは別にアイドルとしての役割を担っていたからではないだろうか。その役割はフジロックでは求められず、純粋に音楽を一緒に楽しめる仲間がいるという安心感がそうさせたのだろう。
name
 金田渉(医者)
best act
comment
 何を置いてもHOT 8 BRASS BAND!生命力溢れるニューオリンズ・サウンド、そして絶妙のアンサンブルに惚れた!中でも、超巨漢のバンドリーダーBennie Peteが紡ぐスーザフォーンのあたたかな低音は特筆もの。どしりと楽曲を支えつつ、音楽をぐいぐい”行進”させる。僕は体ごと振動を浴び、嬉しくて切なくて、どうやら初恋と失恋が同時にやってきている。Marvin Gaye「Sexual Healing」のカバーでそれは極点に達し、気づいたらワイン1本がすっかり空っぽなのでした。
name
 木村慶(新米編集者)
best act
 Bjork
comment
 Bjork目当てで遊びに。日中ほとんど雨で堪えましたが、09年雨の中見たoasisに感動しFUJIにハマったので高まる期待感。結果Bjorkのステージは大地の躍動を感じる素晴らしいものでALLOK!そして、毎年新たな出会いが待っているオレンジコートにて今年もBAIANASYSTEMというブラジル発バンドと素敵な邂逅。空耳系ラップに思わずステップを踏んでしまいました。まだまだ遊べるよFUJI♪
name
 坂本花央理(女子大生)
best act
 Hurts
comment
 ダントツで素晴らしいパフォーマンスをしてくれました。黒スーツ&黒手袋でクールなルックスを装いつつも、たっぷりと熱さを振り撒く姿に思わず惚れ惚れ…。耽美であり端正な雰囲気のある彼らですが、あの時のレッドマーキーの盛り上がりっぷりは尋常ではありませんでした。Hurtsのライブは最高に熱い。
name
 定金啓吾(音楽評論家見習い)
best act
 Vampire Weekend
comment
 新作からの曲が出色の出来栄え。特に「Obvious Bicycles」、「Ya Hey」は圧倒的。惜しむらくはオーディエンスはアフロ・ポップな胸躍るファースト、セカンドの曲にしか反応しなかったこと。それでもバンドは新作曲を丁寧に演奏し、丁寧に歌う。表情は確かな自信に満ち、落ち着き払っていたエズラ・クーニグ。今、自分達が居る場所、進むべき場所に対し自信のある者にしか醸し出せないオーラを纏う。これからのアメリカを背負うバンドのエポック・メイキングなステージ。
name
 霜山 祐希(会社員)
 フジロッカーの嫁に連れられ、怒涛の3日間を過ごしました。初日は真っ先にドラゴンドラに乗り、トンボだらけのデイドリーミングを堪能。降りてのんびりしたあと、いよいよ本腰を入れて観始めたのがオブ・モンスターズ・アンド・メン。「1年間よく頑張った!」と泣き出す嫁、これぞフジロックと言わんばかりに強くなる雨、胸を打つ彼らの代表曲"リトル・トークス"。このコンボが、僕の3日間の始まりでありベストです。
name
 龍慶一郎(ロック愛好家・時々なんちゃってDJ)
 一月の来日時に末期癌である事を公表したウィルコ。MCで「もう君達と会う事はない」と語っていた彼がフジの舞台に立つとは本人すら想像し得なかった事だろう。半日で2ステージ、魂の熱演。マシンガンギターで文字通り蜂の巣にされていると彼が病である事すら一瞬忘れてしまう程。フジ最後の曲は「バイ・バイ・ジョニー」。ウィルコに向けて無数の手が其々の精一杯の思いを込めてバイバイと振られた。あの光景は決して忘れない。

Staff Chart - 2013.08.04

コンプリート・コレクション Planta Gun best 未来世紀 eZ zoo

(左から)

スクーターズ - "スクーターズ・コンプリート・コレクション"  (2003/Ultra Vive)

CSS - "Planta" (2013/SQE)

Chvrches - "EP" (2013/ホステス)

ランキン・タクシー - "全発言記録" (1994/WEA JAPAN)

リンダⅢ世 - "未来世紀 eZ zoo" (2013/クライムエンターテイメント)

selected by ソウヤ