20150528

【レビュー】Temples 『Sun Structures』

洗練されたハイブリッド・ミュージック

Temples
Sun Structures
Heavenly Recordings, 2014年
 イギリスのミッドランズ出身の4人組、テンプルズ。彼らを始めて目の当たりにしたのは昨年11月のHostess Club Weekenderでの初来日公演だった。2012年に結成したばかりのバンドとは思えない完成された音像、メンバーの優雅な佇まい、新人らしからぬ風格と雰囲気に惚れ込むのに時間など必要なかった。筆者にとって、"サイケデリック"といえば、強烈に歪んでいる音像、そして独特の浮遊感と、醸し出されるキラメキに酔ってしまう音であるが、まさにテンプルズの音に触れたあの瞬間は、初めて生で感じた"サイケデリック"という音の原体験であると言えた。
 バンドのフロントマンであるジェームス・バックショー(Vo./Gt.)の自室ですべて宅録したという『Sun Structures』。宅録ならではの自由度の高さを生かし、往年のピンク・フロイドやバーズから、最近のテーム・インパラに至るまで、新旧のサイケデリック・ミュージックや、プログレ、フォークなどあらゆる音楽性を飲み込んで昇華させている。あらゆる音楽性を巧みに調理したことで、まるで万華鏡を見ているようなキラメキと、霞がかった艶めきと妖しさのあるテンプルズ独自のサウンドに仕上がっている。
 『Sun Structures』は、1曲目の「Shelter song」からイントロの12弦ギターのリフより聴くものを幻想的なテンプルズの世界へ引き込ませていく。タイトル曲である2曲目「Sun Structures」以降も、色気のあるムード感たっぷりな「The Golden Throne」、曲から漂う哀愁感がいたたまれない感情を呼び起させる「Move With The Season」、1曲目とはまた異なる、甘美でうっとりとさせる12弦ギターの響きが印象的な「Colours To Life」など、テンプルズの楽曲は、1曲1曲の中毒性がかなり高く、聴く者を幻想世界にトリップさせてくれる。と同時に、どこかスマートさに感じる楽曲たちに陶酔せずにはいられなくさせる。
 彼らは今現在で既に4度目の再来日が決まっている。そして既に世界各地のフェスへ引っ張りだこであったし、スウェードやカサビアンなど大物バンドの前座を務めたりもしていて、ここ最近で数々の大きな場数を踏んできているテンプルズ。今後もさらに躍進していくだろう。彼らは間違いなく大きなバンドへなっていく逸材である。(コイズミリナ

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 本原稿は今年1月にBCCKSにてリリースしました『YEAR IN MUSIC 2014』( http://bccks.jp/bcck/130107/info )に掲載した年間ベスト・ディスク・レヴューです。『YEAR IN MUSIC 2014』では、このディスク・レヴューの他にも50本以上に及ぶディスク・レヴューの他、シャムキャッツへのインタビューや書評、再発盤レヴューも掲載されております。PCまたはスマートフォンにて閲覧可能ですのでぜひご覧ください。