今年1月にBCCKSよりリリースされた『YEAR IN MUSIC 2014』の書評特集において取り上げた南田勝也さんの『オルタナティブロックの社会学』の前段となる、『ロックミュージックの社会学』についても書評を掲載します。
引き続き『YIM2014』を楽しんで頂ければと思います。

音楽性に「ロックか否か」どころか人間性でも「あの人はロックだ」とかいうものにこだわることがあるのは何故だろう。そして内田裕也のような種類の人間は何故存在するのだろうか。ロックが単なる音楽ジャンルを越えて、精神性や価値観を問われるものになったのはどうしてか。著者はこの本で音楽分析や歴史への感動、興奮を伝えようとはしない。あくまで社会学の視点で「ロックとして卓越した存在になること」を証明する原理を一冊の本で説明している。
価値観の体系としての三指標―〈アウトサイド〉〈アート〉〈エンターテイメント〉がロックであることを成立させる考え方はとても分かりやすい。と共に人間が何度も時代や表現の壁にぶち当たる困難さも改めて感じさせる。さらに第4章以降は日本のロックについてページを割いているが、改めてアジアの国でロックをやる困難さを嫌と言うほど感じてしまう。弾けないギターを弾くんだぜという簡単な話ではない。
それでもロックは何かしらの概念として生き残り広がるものであることが理解できた。14年には続編ともいえる『オルタナティブロックの社会学』が出た。研究対象としてロックという音楽はいまだに面白い証拠である。(text by 小泉創哉)