20150526

【レビュー】ゆるめるモ!×箱庭の室内楽 『箱めるモ!』

アイドルとロックバンドの最高なコラボレーション

ゆるめるモ!×箱庭の室内楽
箱めるモ!
T-Palette Records, 2014年
 アイドル戦国時代と言われている今、日本には数えきれないほどのアイドルが存在している。その中で輝きを増してきているのが、ゆるめるモ!というニューウェーブ・アイドル・グループである。ゆるめるモ!は2012年10月に結成。「窮屈な世の中を私たちがゆるめるもん!」をコンセプトに、サブカル界隈を中心に話題を集める。ニューウェーブ、パンク、ヒップホップ、エレクトロなど多彩なサウンドの楽曲は音楽好きの間でも話題になっている。
 そんな彼女たちはさまざまなアーティストとの共演やコラボレーションを積極的に行っている。今回の作品では、ジャンルレスなバンド・アンサンブルによる高スケールな楽曲を提供し続けているバンド、箱庭の室内楽とのコラボレーションを果たした。アイドルとロック・バンドという異色のように思える組み合わせだが、どちらも独創的で高い音楽性を持ちつつ、馴染みやすい楽曲をリスナーに提供してくれるという点においては共通していると思う。
 この作品は作曲、編曲をすべて箱庭の室内楽のハシダカズマ(Vo./Gt.)が担当していて、ヒップホップ、シューゲイザー、ポストロック、オルタナなど、あらゆるジャンルの音楽が詰め込まれており、ゆるめるモ!の魅力が最大限に引き出されている。一曲目「manual of 東京 girl 現代史」は、爽快に駆け抜けるような勢いのあるサウンドと、「みなさん、こんにちはー!」という元気なMCから始まり、リスナーのテンションを一気に上げてくれる。ラッパーのDOTAMAがリリックで参加した「木曜アティチュード」は、グロッケンなどのサウンドが組み込まれている軽やかなアンサンブルと、ゆるめるモ!のメンバーの個性が生み出した脱力系ラップが見事にマッチしている。「木曜アティチュード」以外の曲は、他作品の楽曲も含め小林愛が作詞している。これはどういう意味だ?と考えてしまう不思議な歌詞が、少女達の複雑でもやもやしているような気持ちを上手く表現している。
 アイドルらしい、リスナーをハッピーな気持ちにしてくれるゆるめるモ!のパフォーマンスと、箱庭の室内楽が奏でる疾走感と切なさを感じられるサウンドが融合し、青春の甘酸っぱさがぎゅっと詰め込まれている作品となっている。儚い少女時代を生きている彼女たちと、人の心を捉えて離さないような魅力のある箱庭の室内楽だからこそ生み出すことができた音楽であろう。(日高 玲央奈)

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 本原稿は今年1月にBCCKSにてリリースしました『YEAR IN MUSIC 2014』( http://bccks.jp/bcck/130107/info )に掲載した年間ベスト・ディスク・レヴューです。『YEAR IN MUSIC 2014』では、このディスク・レヴューの他にも50本以上に及ぶディスク・レヴューの他、シャムキャッツへのインタビューや書評、再発盤レヴューも掲載されております。PCまたはスマートフォンにて閲覧可能ですのでぜひご覧ください。

20150524

【レビュー】Gotch 『Can't Be Forever Young』

この作品に込められているもの

Gotch
Can't Be Forever Young
only in dreams, 2014年
 初めてこの作品を聴いたときは、どちらかというと期待を裏切られたような気持ちのほうが大きかった。なぜなら、私の知っている後藤正文はアジカンのフロントマンであり、パワーコードに乗せて力強く歌っているイメージだったからである。
 この作品はアジカンではなかなか見られないGotchこと後藤正文のキャラクターが全面に出されていて、その要素がいろいろな方面から組み込まれているのである。まず、ヴォーカルの他にも、アコギ、ハーモニカ、パーカッション、シンセサイザー、プログラミングなどほとんどの音を自らが演奏している。アコギやパーカッションなどわざとアコースティック楽器を多用したり、あえてシンセサイザーを手で弾いたりして、彼のヒューマニティを存分に出している。サポート・メンバーには、日頃から交流のあるホリエアツシ、下村亮介、井上陽介、TORAが参加している。仲の良いミュージシャンが参加することで、より一層温かみのあるアットホーム感漂う作品になっている。
 一番彼のヒューマニティが表れている部分、それはやはり歌詞であろう。アジカンの曲にはないようなストレートな表現が印象的である。彼が「A Girl in Love / 恋する乙女」なんてどストレートにラブソングみたいなタイトルをつけていることにとても驚いた。この曲以外にも恋について歌っている曲もあるのだが、この作品は全体を通して、生きることや死ぬことについて歌っている。「Sequel to the Story / 話のつづき」の最後に<今日のことは忘れないだろう>という歌詞がある。この文面だけ見ると、「誰でも言いそうな言葉だよな~」と思ってしまうのだが、それを彼が歌うとなぜこんなにも心に沁みるのか。時間が経てば薄れてしまうこと、命には限りがあること。まるでそのことを彼に話しかけられているかのように、言葉が自然と染み込んでくるのだ。
 人同士の出会いもそうであるように、最初はあまりしっくりこない作品であった。しかしなんとなく何回も聴いているうちに、自分と馴染んできて、聴き心地の良い音楽に変わっていった。優しく奏でられているアコースティック楽器の音やノリのいいリズムなど、すべてがこの作品にとって大事な要素であるが、一番の魅力はやはり彼の人間性なのであろう。この作品には音楽に一番大事な”心”が込められている。きっと聴いたすべての人にそれが伝わるであろう。(日高 玲央奈)

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 本原稿は今年1月にBCCKSにてリリースしました『YEAR IN MUSIC 2014』( http://bccks.jp/bcck/130107/info )に掲載した年間ベスト・ディスク・レヴューです。『YEAR IN MUSIC 2014』では、このディスク・レヴューの他にも50本以上に及ぶディスク・レヴューの他、シャムキャッツへのインタビューや書評、再発盤レヴューも掲載されております。PCまたはスマートフォンにて閲覧可能ですのでぜひご覧ください。

20150522

【レビュー】SHAKALABBITS 『Hallelujah Circus Acoustic』

初のアコースティック・アルバムに詰めた想い

SHAKALABBITS
Hallelujah Circus Acoustic
Hallelujah Circus Inc., 2014年
 SHAKALABBITSといえばパンク・ロックというイメージが強いであろう。しかし、この作品はなんと彼等にとって初めてのアコースティック・アルバムである。彼等とアコースティック音楽というのは意外な組み合わせに思えるかもしれないが、メンバー自身、アコースティックの音楽を聴くのが好きで、いつかはアコースティック・アルバムを作りたいなと話していたとUKIのブログに綴られている。それがとうとう完成したのだ。
 最初に流れてきたのは、アコギが奏でるノリのいいイントロであった。一曲目の「MutRon」は、原曲はおどろおどろしいイントロから始まり、奇妙で不思議な歌詞が印象的な曲であったが、その印象はまったく消え去っていた。UKIの歌い方も少しかわいらしい感じになっていて、奇妙な歌詞がなんだか楽しく思えた。アレンジによって、こんなにも原曲の印象を覆されてしまい、一曲目からこの作品の魅力に引き込まれてしまった。「モンゴルフィエの手紙」のような、原曲がアコースティックっぽい曲もアレンジされている。初めて収録曲を知ったとき、アップテンポな曲が収録されていることよりも、このような曲があえて収録されていることのほうが驚いた。この曲も自然と身体を横に揺らしたくなるリズム感で、UKIが吹いているハーモニカの伸び伸びとした音色が心地良い。そしてさりげなく奏でられているヴァイオリンの音色が、この曲の切ない雰囲気にぴったりである。「ROLLIE」はライブで演奏すれば絶対に盛り上がる彼等の代表曲であるが、それがもうよくもこんなにやってくれたな!というくらい別世界になっていた。エコーの効いたアコギの音色と子守唄のように優しいUKIの歌声が、まさに夢の中にいるかのようにただただ広がっていく。おちゃめな小さい女の子のような原曲が、綺麗な大人の姿に生まれ変わったように感じられた。
 「Jammin'」という曲に〈ハレルヤサーカスの鳥たち波に乗った〉という歌詞がある。このアルバム名はこの歌詞からきていて、同じ名前を彼等が立ち上げたレーベルにも名づけている。この歌詞のように、この作品は彼等にとって思い入れのある記念すべき作品であり、今後に繋がる大事な作品でもあるだろう。これが新たな彼等の出発点なのだ。たくさんの想いが詰まったこの作品を、ファンはもちろんSHAKALABBITSの音楽を聴いたことのない人達にも聴いてほしい。(日高 玲央奈)

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 本原稿は今年1月にBCCKSにてリリースしました『YEAR IN MUSIC 2014』( http://bccks.jp/bcck/130107/info )に掲載した年間ベスト・ディスク・レヴューです。『YEAR IN MUSIC 2014』では、このディスク・レヴューの他にも50本以上に及ぶディスク・レヴューの他、シャムキャッツへのインタビューや書評、再発盤レヴューも掲載されております。PCまたはスマートフォンにて閲覧可能ですのでぜひご覧ください。

20150520

【レビュー】SWANS 『To be kind』

愛憎のリヴァース・ショット

SWANS
To be kind
Young God/Mute, 2014年
 ドローンとは即ち反復であり、音を引き延ばすという意志の表れである。幾度も音は反復され、永遠/永続性を強調する。初期スワンズが提示した音もまたドローンであった。メカニカルでマシナリーなハンマー・ビートにノイズまみれのリフの執拗な反復は正しくノイズ・ドローンの形態をとっている。では、スワンズ=マイケル・ジラにとっての反復とは何を指しているのだろうか。
 来年1月に再来日が決定しているスワンズの再結成後3作目となる本作でも根底にあるのは反復=ドローンにあると言っていい。しかし、それでいて、おおよそインプロヴァイズを軸としたであろうと推測できるアルバム構成は各音のパートの分離と隙間が非常に生かされた、有機的で立体的なアンサンブルが特徴だ。言い変えるならば、スワンズ史上最もライヴ感溢れる作品である。強靭な反復のリズムを基調にしつつも、ギター・ノイズは自在に、時に多彩に暴れまわる。ジラのヴォイスはジム・モリソンを彷彿させるように情念を湛え、歌い、叫び散らす。初期のスワンズの反復は脊髄反射的なものであったが、本作におけるスワンズの反復は極めてフィジカリティなものである。リズムの躍動感は呪詛的でプリミティヴですらあるのだ。また長尺が占める楽曲群の構成と展開はスワンズ流の演劇=音劇を鑑賞しているようである。「Bring the sun/Toussaint L’Ouverture」はその象徴であろう。本作の要素を全て凝縮し、展開され、繰り返される。スワンズ流の演劇=音劇は永遠に終わりのない反復なのだ。
 ここで冒頭の問いは繰り返される。スワンズ=ジラの反復とは何を指しているのか。結論から言えば、スワンズの反復は初期の頃から何も変わっていない。即ちスワンズの反復とは愛憎の反復なのだ。徹底した愛憎がジラを反復に掻き立てるのである。愛と憎しみは相反しない。ジラにとって愛することと憎むことは同義であり、愛するが故に憎み、憎むが故に愛する。その愛と憎しみの反復によって、生まれる軋轢がスワンズの反復の根源なのだ。本作でもメビウスの輪のように終わりなき愛憎はグルーヴとなって貫かれていると言っていい。 仮にマルグリット・デュラスのテキストにサウンドトラックをつけるのならば、本作ではないか。『To be kind』は永遠に繰り返される愛と憎しみの間で反復し、そして逆転し続ける愛憎のリヴァース・ショットなのだ。(佐久間 義貴)

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20150518

【レビュー】BORIS 『NOISE』

日本のロック史の新たな金字塔

BORIS
NOISE
tearbridge, 2014年
 『NOISE』はこれまでのボリスの歴史を総括するように非常にバラエティに富んだ内容だ。その音楽的豊穣さはそのまま情報量にも繋がり、ボリス史上最も情報量の多い作品となった。本作にはドゥーム/ドローン/ノイズから出発したバンドがアニソンやヴィジュアル系、歌謡曲と言った日本的音楽要素を飲み込むまでの歴史が極めて濃度と強度の高い音を持って詰め込まれている。ボリスの膨大な諸作の中で中央に位置する指針となる作品と言えよう。
 更に本作はいよいよ日本のロック史に踏み切った作品と言えるのではないか。「Vanilla」や「太陽のバカ」のようにJ-ROCK的なメロディがあり、日本的な抒情性のある歌はイースタン・ユースやブラッドサースティ・ブッチャーズのような日本のオルタナティヴ・ロックの巨匠等に通ずるものがある。また、先鋭的なギタリスト栗原ミチオ離脱を逆手に取るように隙間を生かした有機的なバンド・アンサンブルは彼らが《バンド》に戻った事を強く印象づける。元々演奏の引き出しが多いとは言えないバンドだっただけに新鮮味を感じさせる。以前までは轟音で埋め尽くし楽曲の輪郭を曖昧にすることによって一種の暗号化するという手法をとっていた。しかし、本作は以前とは異なり楽曲の輪郭がはっきりしていることによって、より《音楽的》に感じられるのだ。全曲をシングルにしても差し支えないぐらい分かりやすく、且つ質が高い。「Angel」のような大曲でも極めてキャッチ―だ。「Quicksilver」のような疾走感溢れるハードコアな楽曲でも歌が耳に残る。ギターフレーズも極めてJ-ROCK的である。全曲比較的コンパクトな仕上がりとなっている。
 ボリスがここにきて日本のロック的なアプローチを強めて来ているのは、日本のバンドでありながら海外活動を主としてきたのが大きいのではないか。外から内を見ることによって日本のロック、音楽の面白さに気づいたのではないか。これまでのボリスに日本の音楽的要素が感じられなかったわけではない。己の中に流れる日本の音楽的素養を持ちながら『NOISE』にはまるで海外のバンドが日本のロックを解釈したような、ある種矛盾を内包したユニークさがある。
 本作でボリスはこれまで海外の文脈で語られてきたものから、日本の音楽シーンの文脈で語られるべき存在となった。『NOISE』は日本のロック史に新たな金字塔を打ち立てたのだ。(佐久間 義貴)

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 本原稿は今年1月にBCCKSにてリリースしました『YEAR IN MUSIC 2014』( http://bccks.jp/bcck/130107/info )に掲載した年間ベスト・ディスク・レヴューです。『YEAR IN MUSIC 2014』では、このディスク・レヴューの他にも50本以上に及ぶディスク・レヴューの他、シャムキャッツへのインタビューや書評、再発盤レヴューも掲載されております。PCまたはスマートフォンにて閲覧可能ですのでぜひご覧ください。
 

20150517

YIM寄稿者によるメタル座談会:その4

 asatte+メタル企画4回目。今回が最終回となります。ここまで触れられてこなかったジャズやクラシック、ポップスとメタルの関係についてみていきます。

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——最後は板垣さんのセレクトです。板垣さんにはメタルと他のジャンルとの親和性という観点で、年代やジャンル問わず広く選盤してもらいました。

■ 山下洋輔トリオ「キアズマ」

——音源は山下洋輔トリオのヨーロッパで75年に演奏されたライヴ音源。ドラムは森山威男、アルトサックスが坂田明です。

堀中:正直聴いてみたかったんですよ。僕は聴いたんですけど、これがメタルには全く聴こえないですね。

佐久間:僕も聴こえなかったです。どこにメタルっぽさを板垣さんが感じているのかを聞きたくて。

板垣:全然メタルに聴こえなかったですか?

——メタルよりもジャズのほうが馴染みがあって、普通にジャズとして聴いていました。主にメタルっぽいなと思うのは、どの楽器ですか。

板垣:どの楽器が、というより全体的にメタルを感じます。音の詰め方がすごくスレイヤーっぽいなと私は思って。

——曲中にあまり隙間を作らない感じというか。

板垣:そうです。前ノリというか。R&Bとかは溜めていくじゃないですか。そうではなくて前のめりに音を鳴らしている感じが、ハードロックとかメタルっぽいなと。山下洋輔さんや、同時期のフリージャズ、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ(Art Ensemble Of Chicago)とかを聴くと、楽器が叫んでいるように聴こえる。

佐久間:スレイヤー的というと、ドラムはそういうところがあるかもしれないですね。ポール・ボスタフではなくデイヴ・ロンバートにはそういう感じがあると思う。

堀中:ドラマーがこういうジャズに影響を受けているというのはあるかもしれない。このアルバムも75年発表でスレイヤーの結成よりも前の作品だし。

佐久間:確かに、オーペスのドラムはジャズ的なところとも隣接してる気がします。

——この曲の終始一貫した焦燥感というか執拗に音を鳴らし続ける感じは、最近のライヴでも変わってないですよね。あと、メタルを感じるジャズとして座談会の前にバッドバッドノットグッド(BadBadNotGood)も挙げていました。


■ バッドバッドノットグッド(BadBadNotGood)「Bugg'n」

板垣:いま、またニュージャズみたいな面白いジャズが沢山出てきていて、そういうのがメタルとクロスすることがないのかなあと。ジャズが変わったら、ロックひいてはメタルも変わるように思っていて。ジャズは色んな模索を経て現在のニュージャズに至る訳ですけど、さっきのようなフリージャズが壊して生んだものも含めて、ジャンルを超えた地殻変動が起きないかなと期待しています。かつてミクスチャーが生まれてアーティストたちが様々な方向を向いていた時代みたいな動き。ロバート・グラスパー(Robart Glasper)ニルヴァーナ(Nirvana)の「Smells Like Teen Spirits」をカヴァーしましたけど、グランジを黒人音楽のノリに変えてしまっていた。エレクトロの分野からもフライング・ロータス(Flying Lotus)とかみたいにジャズの影響を受けて新しい音を作る動きがある。

——ジャズとその他のジャンルが相互に混ざり合っていく流れがここ最近ずっとあると。

板垣:ニュージャズでも、バッドバッドノットグッドみたいに白人の側からの回答も。今のところ、ニュージャズで楽器が叫ぶ系はないように思うけど、これから出てきてもおかしくないのではと。

——ジャズは、ビバップとかモードとか理論的な面での変化や進歩があったように思います。メタルについてもそういった理論的な進歩や新しい奏法などが今でも登場しているのでしょうか。

佐久間:現在では全くないと思っています。さっき取り上げられたオーペスも最初の方がすごく斬新なんですよね。プログレとデスメタルの要素があって。マストドンも初期よりもだんだん70年代の要素がどんどん増えていて、トラディショナル化するというか。最終的に皆そういう方向に行ってるんじゃないかって。

堀中:個人的には、音楽的に進歩したとか新しかったのはパンテラ(Pantera)の登場までかなと。

板垣:そうですね。

堀中:ああいうヘヴィなリフでというのはパンテラが最後で、その後はそれまでの要素の組み合わせというか。

板垣:パンテラから影響を受けて他の要素を取り入れているバンドはすごく多いですよね。


■ アンエクスペクト(Unexpect)「Desert Urbania」

板垣:その名の通り、予想外の展開をするという。スイング・ジャズみたいなものがベースにあるような感じがします。アヴァンギャルド・メタルと言われているようなジャンルの一つかなと思います。

佐久間:展開が凝っているメタルの中でも、ポップなものとそうでないものがあると思いますが、これはすごくポップですよね。プロテスト・ザ・ヒーロー(Protest the Hero)とかと同じような。

板垣:あの路線に近い感じではあります。メロディがあるようなないようなというか、途中でメロディを壊してまたメロディを作るような感じ。ジャズの要素にクラシックとメタルの要素が入ってるようなイメージがします。

佐久間システム・オブ・ア・ダウン(System of a Down)とかにも近いですよね。彼らがアヴァンギャルドなメタルの一番有名どころかもしれない。

——アンエクスペクトはカナダのバンドですね。

堀中:カナダってこういうプログレっぽいというか、テクニカルなバンドが多いような。

佐久間:プロテスト・ザ・ヒーローがまさにカナダですよね。

板垣:そうそう。プロテスト・ザ・ヒーローのようなテクニカルでかつエモっぽいサウンドがすごく受ける国なんですよね。

——エモについてはここまで何度か話に出てきましたが、メタルから派生している部分もあるんでしょうか。

佐久間:それはないですね。エモはハードコアです。元々エモはフガジ(Fugazi)のイアン・マッケイですよ。イアン・マッケイと、ジョーボックス(Jawbox)のJ.ロビンスが2大巨頭ですね。そこからポスト・ハードコアを経由しての泣きっぽい歌とかメロディとか。

——ハードコアを出自に発展していったという。

佐久間:そうです。あとはポスト・ロックとかと接合していってという。

堀中:そういうところの際にあったのが、先日来日したミネラル(Mineral)とか。ミネラルもライヴ見てるとハードコア。アンプは持ってきてなくて、ライブハウスにあるマーシャルのアンプに直差しでギター振り回しながら演奏してて。でも、音は綺麗なメロディで、やっぱエモはハードコアなんだなあと。

——ハードコアとメタルというジャンルの成立時期を大まかにみるとハードコアの方が遅いですよね。

佐久間:遅いと思います。

堀中:ここでいうメタルの源流には70年代後期のNWOBHMがあって、ハードコアはその後(80年代以降)ですね。メタルはNWOBHM、つまりヨーロッパのイメージが強いですけど、一方のハードコアについてはUKのハードコアもありつつも、やっぱりアメリカのハードコアが与えた影響が大きいイメージがありますね。

佐久間:ロンドン・パンクに影響を受けた人たちが更に激速化していったのがアメリカですね。

堀中:そういう感覚の違いがあって、ルーツを辿っていった時に、ヨーロッパかアメリカかという。


■ ワーグナー「Twilight of the Gods」

板垣:どちらかというと神様が出てくるよりも悪魔が出てきそうな感じなんですけど。ドイツのハロウィン(Helloween)というバンドが、これに影響されて同名の曲をリリースしています。(アルバム『守護神伝 -第一章-(Keeper Of The Seven Keys Part 1)』に収録)

——ワーグナーはロマン派の作曲家ですね。座談会にあたってバッハの話も少し出てたように記憶していますが、メタルとクラシックの結びつきについてもう少し話を聞かせてください。

板垣:ロックって元々ブルースからきているじゃないですか。クラシックは自分たちの白人の音楽だからロックに取り入れられるんじゃないかということで、最初に取り入れたのが多分ビートルズだと思うんですけど、それをハード・ロックに取り入れていったのが、エマーソン・レイク・アンド・パーマー(Emerson, Lake & Palmer)のキース・エマーソンとかディープ・パープル(Deep Purple)のジョン・ロードだと思うんですね。取り入れる時に、今までのクラシックのモードみたいなものを新しいコードに変更したとリッチー・ブラックモアも言っていて、その辺が今のバンドにどう生きているかというのがわかったら面白いと思ったんですけど、私はその辺はあまりわからない。

佐久間:かなり技術的な話ですね。

板垣:そうですね。ただ、シンフォニックなメタルの和音の進行は、クラシックからの影響が大きいみたいですね。各アーティストがクラシックの進行を微妙に変化させて使っているのかなと。

——佐久間さんがさっき話していた変化とは逆方向での話ですね。ドローンとかと結びついて和音とか関係ない世界に行ってしまう一方で、あくまでもロジカル/技巧的に進歩させていくベクトルもあると。

板垣ダニエル・ラノワ(Daniel Lanois)のソロの「Opera」という曲を聴いたときにも、メタルっぽさを感じたんですよね。U2とかハード・ロック/ヘヴィ・メタルのプロデューサーなんですけど、最近はメタルっぽい実験音楽を作ったり、逆にスティールギターで和みの音楽やったりしています。実験音楽とはいえ、和音の基礎があった上で外してるみたいに思えます。自分がクラシックの中にハード・ロックを初めて感じたのは、友人の演奏会でだったんですけどね。

——それはフレーズのニュアンスとか、雰囲気があるとかそういったものですか。

板垣:そうだと思います。あとはヘヴィな感じがあるとか。ハード・ロック/ヘヴィ・メタルに陽性と陰性とあるとしたら、陰性なものにはそういった暗さや重さを求めてしまいますね。現実でのストレスや嫌な感情を忘れさせてくれる音、みたいな。あと『Metal Evolution』を書いたサム・ダン監督が言うには、ワーグナーの音を低音にしたものがハード・ロック的で、例えるとワーグナー=ディープ・パープル、ベートーベン=レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)、バッハ=ヴァン・ヘイレン(Van Halen)とか。


■ BABYMETAL「紅月」

佐久間:完全にX JAPANですよね。

板垣:私は「メギツネ」を聴いてBABYMETALにハマりました。でも歌い方が荻野目洋子さんとかのような日本のアイドルの歌謡曲。発声も基本ストレートな発声ですね。ペンタトニック・スケールで演歌にも近いかもしれない。いわゆるブラック・ミュージックのニュアンスとは違いますよね。

堀中:ライヴで「紅だー!」と叫ぶのではなく「アカツキだー!」と叫ぶ部分があって。そういうところまでオマージュするのかと。SU-METALはぎりぎり(97年12月生まれ)だけど、他のメンバーはX JAPANの解散後に生まれているし、もうX JAPANを知ってるとか知らないとかの話ではない。

板垣:X JAPANの要素に、アニメソングの要素に、アイドルJ-POPの要素に、B'zの要素もちょっと入っているように思って聴いてました。キバオブアキバとスプリットのシングルを出してたりとか、アキバ系の要素もあるかなと。

——アキバ系、という話ではメタル自体が日本だとオタク的なイメージもある音楽なのかなと思うのですが。

佐久間:そうですよね。板垣さんの話に出てたものって全部オタク×オタク×オタク、みたいに変換できるなって。

堀中:ファンとしても、一般的なところからはそう思われているという意識がメタラーと言われている人達はあって。それで閉鎖的になっているような感じがあります。例えば、とても有名なとある少年犯罪が報道されたとき、ワイドショーでは犯人はメガデス(MEGADETH)のファンだったと報道されたこともありました。他の事件でも、犯人が少女アニメファンだったとかって報道されてしまうのと近いというか。

佐久間:アメリカでも、少年犯罪者がスリップノットやマリリン・マンソン(Marilyn Manson)を聴いてたという話はありますもんね。

堀中:そういうところからの防衛本能のようなものが働いて、メタラー側が壁を作らざるを得ないというか、どうせそう思われているんだろうという感じでオープンになりきれない部分もある。海外も同じなのかもしれない。

——B'zっぽいっていうのはどんな感じですかね。

堀中:B'zっぽい=ジャパメタっぽいサウンドかなと思いますよ。日本語の問題もあると思うんですけど、メロディーから受ける印象が歌謡曲とかJ-POPを思わせる感じがあって、いわゆる洋楽っぽくない。

板垣:「いいね!」のイントロがB'zっぽいんです。Exective Producerに、Inabametalって名前があるんですよね。稲葉さんではないにしても、影響を受けてる誰かとか。

——「いいね!」は途中でゆるいラップが入っていたり、メタル度は低くくてアニソン的にも聴けますね。

堀中:J-POPのミュージシャンにメタル出身者が多かったのもあって、意識していないところでそういう要素が入り込んでいる可能性はありますよね。UNICORNTHE YELLOW MONKEYとかも、かつてメタル・バンドをやっていたメンバーがいたりしますしね。

——元々メタル的なものを刷り込まれていたんじゃないかと。

堀中:BABYMETALは、最新曲「Road of Resistance」でメンバーにメタルをやってるという自我がかなり出てきている感じがします。

——彼女達のサウンドに近いメタルのバンドっているんでしょうか。

堀中:新曲はドラゴンフォース(Dragonforce)のメンバーがギターを弾いていますが、いろんなものが混ざってるような。

板垣:一番近いなと思ったのはCrossfaithとか。

佐久間:Crossfaithはメタルともちょっと違うような。

堀中:Crossfaithはハードコアのイメージが強いですね。日本ではあまりメタルって感じじゃない。

——ハードコアとメタルの対比はこれまでの話の中でもよく出てきたポイントですね。

佐久間:日本のラウドロックシーンって特殊じゃないですか。これもそうだけど、Pay Money To My PainとかColdrainとか。このあたりはラウドロックという日本独特の括り方があって、Crossfaithもそっちに近いですね。

——なるほど。BABYMETALが広く聴かれているのは、メタルがどうこうというより、日本にはラウドロック的なバンドが結構いっぱいいて、そういったサウンドがポップスの中にもそもそもあったからなんじゃないかと。

堀中:それにも少し関連しているのですが、UK・Metal Hammer誌とUS・Revolver誌で、2014年5月に行われたBABYMETALのUK公演の後、BABYMETALに興味をもった人におすすめの日本のバンドを紹介した記事があります。

<BEYOND BABYMETAL: THE NEW WAVE OF J-METAL>
・FEAR, AND LOATHING IN LAS VEGAS
・MAN WITH A MISSION
・GALNEYRUS
・TOTALFAT
・SiM
・ONE OK ROCK
・MY FIRST STORY
・DAZZLE VISION
(参照元:Metal Hammer

<Six Totally Insane Japanese Metal Bands>
・BABYMETAL
・マキシマム・ザ・ホルモン
・MAN WITH A MISSION
・SIGH
・SAND
・SWARRRM
(参照元:Revolver Mag

——NEW WAVE OF J-METAL、と。

堀中:レコメンドされているのがONE OK ROCKとかMAN WITH A MISSIONで、日本ではロキノン系と言われているようなバンドも、UKのメディアからはメタルとして扱われていると。一方でアンダーグラウンドなものも取り上げられているんです。

佐久間:Boris、SWARRRMSIGHとかも。

堀中:紹介されてる文脈で考えると、BABYMETALのことをメタルかメタルじゃないかって気にしているのは日本だけなんじゃないのかと思いますね。今の20代くらいまではBABYMETALもONE OK ROCKも同じように聴いていて、それは海外でも変わらないんじゃないかなと。


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 1ヶ月にわたり定期連載してきましたメタル座談会は今回で終了となります。座談会を通し、元々ヘヴィ・ロックやプログレをルーツに形成されたメタルは、ハードコア的なものと交わり、理論的な面と身体的な面を両面持つことで、流動的にそれぞれのバランスを変化させながら様々なサウンドやいくつものサブ・ジャンルを生み出し続けているような印象を受けました。こうした流動性の中で、メタルはポップスからアンビエントまで、雑多なジャンルと結びついているのではないかと思います。本企画を通し何かメタルに対しての新しい視点や情報を得ることができていれば非常に嬉しく思います。最後までお読みいただきありがとうございました。
  

20150516

【レビュー】初音階段 『恋よ、さようなら』

ボカロとノイズによる錬金術 原曲への愛ある洋楽カバー集

初音階段
恋よ、さようなら
U-Rythmix Records, 2014年
 非常階段による他アーティストとのコラボの一つ、“初音階段”(=ボーカロイド“初音ミク”+キング・オブ・ノイズ“非常階段”)のスタジオ3作目は初となる洋楽カバー集。鮮烈なデビューを飾った前年に続き、2014年も新作リリースや海外公演など活発な動きを見せた。
 前作『からっぽの世界』は、佐井好子や裸のラリーズらのマニアックなものからアイドル・ソング、アニソンまで多彩な邦楽のカバー集で、ノイズとボカロの意外な邂逅によって相性の高さを示した彼ら。初音ミクでは初となる英語版ライブラリーが2013年9月にリリースされたということで、洋楽カバーの制作は半ば必然で、早くも2014年2月にリリースされたのが本作『恋よ、さようなら』だ。
 今回取り上げられた楽曲は、バート・バカラック、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、パティ・スミス、スラップ・ハッピーらの多彩なジャンルの10曲。なかでも、ケイト・ブッシュの個性的なボーカルにも負けることなくボカロが違和感なく聴けてしまう「嵐が丘」や、バックで鳴り響くギターによるノイズがむしろ美しくさえ聴こえる「風に語りて」は、斬新な解釈と原曲への愛が感じられる秀逸な仕上がりだ。トッド・ラングレンの名曲「瞳の中の愛」、リンダ・ロンシュタットの「愛は惜しみなく」もオリジナルの雰囲気を損なわずに初音ミクの魅力も引き出すボカロのトラックの完成度が高さに驚く。
 アートワークは、曲では取り上げていないエマーソン・レイク&パーマーのアルバム『LOVE BEACH』のレコード・ジャケットへのオマージュ。しかも青春胸キュン・イラストレーターのわたせせいぞう“風”タッチで、という念の入れようだ。
 ボカロPによる各トラックの好プロデュース、出すぎず引きすぎないノイズを絶妙に被せるJOJO広重の天才的名演などが相まって、違和感ないどころか、こんな新解釈による洋楽カバーはかつてないのではないかというくらいの完成度。JOJO広重が主催し非常階段の作品をリリースしてきたレーベルの名が“アルケミー(錬金術)”だが、ボカロ+ノイズで想像以上の価値を提示し、バカラックとヴェルヴェッツとクリムゾンなどあり得ない組み合わせに違和感を覚えさせない洋楽カバー集となった本作は、まさに“錬金術”のなせる業だ。そして、この斬新な錬金術の根底にあるのはJOJO広重の原曲に対する愛であることはもはや言うまでもない。(夏梅 実)

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